デジタル信号を1度もアナログ信号に変換することなくスピーカーを駆動できる、クラリオン『Full Digital Sound』。これには既存のカーオーディオシステムでは得られない、特別なメリットがいくつかある。しかしその一方で、“弱点”を指摘する声もある…。
その“弱点”とは「発展性の不足」であるのだが、実を言うとクラリオン『Full Digital Sound』には、「発展性」も備わっている。「発展」させることで、この革新のカーオーディオシステムを、さらに楽しみ尽くせるのだ。
今回はそこのところ掘り下げながら、当システムの可能性を、改めて浮き彫りにしていこうと試みる。
■音が良く、省電力・省スペース、そして“わかりやすい”ことがメリットなのだが…。
最初に、クラリオン『Full Digital Sound』ならではの特別なメリットとは何なのかを、おさらいしておきたい。
真っ先に挙げるべきは、「音が良いこと」だ。このシステムにはノイズの影響を受けにくい等、“フルデジタル”という仕組みによってもたらされる、音質に効く理論上の利点が多々ある。そしてそれらが額面どおり活かされる形で仕上げられているので、『Full Digital Sound』は音が良いのだ。
続いて挙げるべきメリットは、「省電力・省スペースであること」だ。既存のカーオーディオシステムとの決定的な違いも、ここにある。通常ならば、本格的なシステムを構築しようと思えば外部パワーアンプが必要となるが、『Full Digital Sound』ではそれが必要ない。結果、システムが場所を取り過ぎることがなく、かつ電力消費も圧倒的に抑えられる。
さらには、「わかりやすさ」もメリットだ。システムがある程度完結しているので、これを導入しようとする際に予算をイメージしやすい。上を見ればキリがないのがカーオーディオであるのだが、『Full Digital Sound』では、どこまで予算をつぎ込めばいいのかわからない…、という迷宮に入り込むことがないのである。
■『Full Digital Sound』においての、ステップアップ術とは…。
ところが、この「わかりやすさ」が、「発展性のなさ」を生んでいるとも指摘されているのである。
しかし、そう決め付けてしまうのは早計だ。クラリオン『Full Digital Sound』でも、ステップアップさせていく楽しさを味わえる。
“デッドニング”とは、スピーカーボックスの内部の音響的コンディションを上げていく行為だ。しかしながら『Full Digital Sound』を導入する当初は、予算を抑え込むために、軽めのメニューにとどめられることも多いようだ。
そうであったなら、むしろラッキーだ。後からこれを見直すことで、音が変わる感動を再び味わうことができるからだ。“デッドニング”は細かくみていくと、やるべきことが多岐にわたる。その1つ1つを丁寧に実行していくことで、『Full Digital Sound』のポテンシャルをさらに引き出すことが可能となるのだ。
理由は2つある。1つは、スピーカーから放たれる音が内張りパネル内に入り込まなくなるから。結果、内張りパネルの共振が相当に減る。そしてもう1つの理由は、音を、ロスなくダイレクトにリスナーに届けられるから。この効果は絶大で、スピーカーを別物にしたかのようにサウンド・クオリティを向上させられるはずである。ここまでの進化を果たせれば、『Full Digital Sound』による音質向上体験を、三度味わうことができるのだ。
実は『Full Digital Sound』のプロセッサーは、当初からフロント3Wayのコントロールが出来るように設計されていたのだ。現状でも、アナログスピーカー&アンプを組み込んだり、またはフルデジタルスピーカーをダブルで使用して3Way化を図ることも可能なのだが、『フルデジタル・ミッドレンジ』が登場すれば、もっと手軽に『Full Digital Sound』による3Wayシステムを手にできる。
ただし通常のカーオーディオシステムでは、ミッドレンジ・スピーカーを導入するのと同時にパワーアンプも必要となる。しかし『Full Digital Sound』ではそれが不要だ。「3Way」を、より合理的に実現可能なのである。もしもこれがリリースされたなら、当システムのユーザーにとって、明らかに朗報となるだろう。