スズキの2017年3月期決算会見で見えてきたインドでの次なる戦略

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スズキの2017年3月期決算会見で見えてきたインドでの次なる戦略
  • スズキの2017年3月期決算会見で見えてきたインドでの次なる戦略
  • スズキの鈴木修会長(右)と鈴木俊宏社長

「ニューデリーの空は北京よりもひどい」---。スズキの鈴木修会長は5月12日に開催した2017年3月期の決算会見でこう話し、インドの自動車市場が「このまま一本調子で成長していくとは思えない」と強調した。

インドの自動車市場は2016年度(16年4月~17年3月)の新車販売台数が376万台と15年度に比べて8%増加した。これで前年度実績を上回るのは3年連続だ。高額2紙幣廃止の影響で昨年11月~12月の販売が落ち込んだものの、今年に入って持ち直し、4カ月連続して前年同月を上回っている状況が続いている。

うち乗用車が304万台と市場全体の8割を占め、スズキはその約47%のシェアを占め、圧倒的な強さを誇る。インド市場は文字通り、スズキにとって最も重要な市場である。それは2016年度の4輪車世界販売台数を見てもよくわかる。スズキは291万台(前年度比2%増)と過去最高を更新したが、うち約5割をインドでの販売が占めているのだ。

特に小型車『バレーノ』やSUV『ビターラ・ブレッツァ』が好調で、受注が生産を上回る状況が続いているという。今年2月には現地で3カ所目の生産拠点となるグジャラート工場を稼働させ、その需給ギャップを埋めようとしている。そのグジャラート工場ではさらに生産能力を増強する計画で、2019年には倍の50万台規模になる予定だ。

ただ、そのインド市場について、鈴木会長はニューデリーの空を見て危機感を募らせている。「経済成長が6~7%の状態が続いているが、いつ何時成長が低下するとも限らず、自動車市場がこの先一本調子で伸びていくとは考えられない。慎重に生産計画、販売計画を立てていかなければいけない」と話し、こう付け加える。

「今のようなクルマをどんどんつくれば売れるという時代は、そんなに長く続かない。環境面や安全面が非常にポイントになってくる。それらの問題を重視していかないと、つまらないところで躓くと思う」

事実、インド政府は大気汚染対策として20年以降に排ガスや燃費規制を厳しくする方針を打ち出している。そこでスズキは東芝とデンソーの3社で、インドに自動車用リチウムイオン電池パック製造のための合弁会社を年内に設立する。20年頃には電池パックの製造が開始される予定で、スズキはそれを自社の車両に搭載し、ハイブリッド車の品揃えを広げようと考えている。

鈴木会長は「本当の勝負はこれから」と考えており、スズキは他社に先駆けて環境や安全面を充実したクルマを投入することによって、インド市場で高いシェアを占めてきた地位を守ろうというわけだ。

《山田清志》

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