アストンマーティン、2019年にEV…アンディ・パーマーCEOが語る今後【インタビュー】

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アストンマーティンラゴンダ CEOのアンディ・パーマー氏
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  • アストンマーティン・ヴァンキッシュS
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100周年を迎え、新たに次の100年に向けたセカンドセンチュリープランを打ち上げたアストンマーティン。そのCEOであるアンディ・パーマー氏が来日したのを機に、現在のアストンマーティンの状況、そして、今後のニューモデルについて話を聞いた。

◇自信を取り戻した組織

---:アンディ・パーマーさんが2014年にCEOに就任して以来、アストンマーティン社は大きく変革をしているように見えます。それに伴い社内での雰囲気の変化はありますか。

アンディ・パーマー氏(以下敬称略):はい、それはありますね。社内では大きく3つ変わった点があります。そのひとつは組織的なレイヤー、階層を変えたことです。現在は私がトップにいて、その下にVPというポジションに12名います。その下にディレクター、そしてマネージャーです。以前はその間にCOOやxx長と呼ばれる階層があり、小さな組織であるにもかかわらず、政治的に複雑すぎるので、よりフラットでシンプルな組織に変更しました。

次に、社内のキーマンとなる人たちの組織や役割を変えました。具体的には3つのポイントがあります。ます、電気系統の質を変えなければいけないと感じていました。そこで、電気系統のエンジニアリングで、世界中で一番優秀だと思われる、カタオカさんを日産からリクルートしました。

次にスポーツカーとして考えた時に、世界で一番素晴らしいスポーツカーを作っているのはどこか。それはフェラーリです。そこで、フェラーリのナンバー2だったマックス・スウェイをリクルート。彼に我々のセカンドセンチュリープランを検討しに来てもらいました。

最後は、品質面で一番いいところはどこか。それはトヨタです。そこからはイギリスのトヨタの工場で働いていたリチャードという人をリクルートしました。

我々の従業員、2000人全てを変えるのではなく、組織の核となるキーマン、10から15人くらいを変えることで、全ての組織が大きく更新されました。その結果、いままで12年に1台しか新型車が出ていなかった会社が、1年に1車種ペースで作っていく会社に変わったのです。

3つ目は英語の表現で、“成功は成功を呼ぶ”ということわざがあります。私が入社した時、社員は自信をなくしていました。そこで、私が入社してから毎年2つの限定車を発売しました。2015年には『ヴァンテ―ジGT12』と『ヴァルカン』。2016年は『ヴァンテージGT8 』と『ヴァンキッシュザガート』。2017年には『DB4GT』を出しました。そして、『ヴァルキリー』も近い将来予定されています。これら限定車は出した途端に全て完売するという結果をもたらしました。

つまり、限定車であっても、高額であっても、コレクター商品としてすぐに売れるんだということがわかったのです。実は同じ原理を『DB11』にも適用し、日本向けの2017年バージョンは全て完売しています。今後、ヴァンテージの新しいモデルも登場します。これもすごく美しいクルマです。その結果、社員は皆自信を取り戻し、いま自分たちがやっていることは意味があるものだと信じることが出来たのです。そして、我々はグローバルカーカンパニーだという思いを取り戻したのです。

我々がお客様にクルマを提供するスタイルは、とても個性的で、もちろん値引きもありません。クルマを売りつけるのではなく、アストンマーティンのファミリーの一員になりましょうと提案をし、美しいクルマを売ることです。もちろん、傲慢すぎてはいけません。つまり、我々が世界で一番美しいクルマを作っている、これからも作っていくと言う自信を取り戻したことが、とても大きな変化だと思います。

◇モデルごとの個性を明確化ために

---:アストンマーティンをテストすると素晴らしいパフォーマンスを持っていることに気づかされます。現在テストに関しては、ダレン・ターナーなどのレーシングドライバーも参加していますが、ロータスの元チーフシャシーエンジニアであるマット・ベッカーもテストをしてますね。彼もパーマーさんがリクルートしたのですか。

パーマー:はい(即答)。この業界ではマットはロードカーについては最強だと思い声をかけました。その理由は、DB9やヴァンテージ、ヴァンキッシュなど、それぞれスポーツカーではありますが、全て性格が似て、同じような乗り味だったのです。そこで、差別化していかないといけないと考えた結果、彼をリクルートしたのです。

デザイナーのマレック・ライヒマンには、デザイン上の差別化を頼みました。例えばヴァンテージであれば2シータースポーツカー。DB11はGT、更に上のスーパーGTであればヴァンキッシュと、それぞれのパーソナリティを変えたのです。

レーシングドライバーのダレン・ターナーは、もちろんサーキットでは完璧な存在なので、彼には乗り味をきちんと差別化できるように個性を加えてもらっています。そして、マットには、例えばDB11はGTカーなので、乗り味だけではなく長距離を走らなければいけない。500マイル走った後でもクルマから出てきてもあまり疲れておらず、良い気持ちでいられるような性能が必要ですので、そういった性格付けをしてもらいました。そうそう、ヴァルキリーはマットとバレンが一緒に開発していますよ。

◇ヴァルキリーは順調に開発中

---:いまヴァルキリーの話が出ましたが、現在開発は順調に進んでいますか。

パーマー:ヴァルキリー!! とてもいい名前だと思いませんか? 開発は順調に進んでいます。開発を開始してちょうど1年経ったところですが、良いところと悪いところの両方があります。この開発にあたっては、エイドリアン・ニューウェイ(レーシングカーデザイナー)を起用しています。彼はとても集中力が高くこだわりも強いので、一緒に働くものとしては簡単なことばかりではないのです。

しかし、彼のミリ単位でのこだわりなどを考えると、全体的に良い結果を出してくれたのではないかと思っています。トヨタや日産、フォードなどがクルマを開発する際は、寒いところや暑いところなどでテストをしたり、デザインを考えたり議論したりしていく末に、だんだん平均的なものになってしまいますよね。しかしエイドリアンはクルマの開発を、いわゆる大企業がやるようなスタンダードな枠組みで作ったことがないのです。

既成概念や標準的な思い込みが一切なく、例えば、車高の基準をクリアする方法や、エグゾーストの取り回しなどで我々が普通に無理だと思うことをやってのけたりもしてしまいます。もちろん全てではありませんが、平均的なクルマ会社としてありがちだったことを、エイドリアンと一緒にやったことでひとつ高い基準でクルマ作りが出来るようになったことは大きな収穫です。ヴァルキリーはF1を公道に持って来たというコンセプトなので、とても良い影響になっていると考えています。

◇一足飛びにEVへ

---:それでは今後のモデル展開でお話が可能な範囲で教えてください。

パーマー:ます私はEVファンであることを明言しておきましょう。会社に入社した時に、会社全体として環境的な基準を満たさなければいけないこともあり、2つのオプションがあると考えました。ひとつはエンジンの全体的なダウンサイジング。ポルシェなどのやり方ですね。もうひとつはダウンサイジングではなく、V12などのエンジンを維持しながら、相殺する新しいテクノロジーを投入していくものです。

そして我々は後者を選びます。その理由は、エンジンをダウンサイジングしていくとエンジンサウンドが、我々のこだわる美しさの基準にミートしていかないので、この妥協はしたくないのです。

それを踏まえまずは、2019年に小さいボリュームで実験的ではありますが、最初のEVを出す予定です。これは規制にもきちんと準拠しながら、技術的な部分の学習や実験的なことを含めたものです。

そして、将来的にラゴンダ(セカンドセンチュリープランで発表された、新型4ドアラグジュアリースポーツセダンとして、ロールスロイスやベントレーと競合するモデル)には、EVというオプションは必ずあると思います。ただしエレクトリックモーターをガソリンエンジンと共に搭載するハイブリッドではありません。ハイブリッドは、EVが究極とした時に、その1歩手前の段階だと考えています。つまり我々は、ハイブリッドを経てEVに行くのではなく、そこをスキップをして一気にEVに飛んでいきたいと思っています。

---:このEVテクノロジーは自社開発ですか。

パーマー:コアの技術は自社で持っていたいと思っています。我々は小さい会社ですが、V12エンジンは自社で作っています。また、EVを将来的に考えた時に25%ほどのボリュームになると想定していますので、そのコアな部分、心臓部は自社で開発し、持っていなければいけないのです。もちろんバッテリーの部分でコラボレーションすることはあるかもしれませんが、肝心要の技術は自社で開発していきます。

---:最後に今年のヴィラデステコンクールデレガンスには何か新しいモデルは発表しますか。

パーマー:残念ながら今年はありませんが、ペブルビーチコンクールデレガンスには期待してください。
《内田俊一》

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