江戸時代、軍船を禁じられた大名が、中型軍船を豪華に飾り立てて社交の場とした「御座船」。その姿を現代に再現した御座船「安宅丸」(あたけまる)の船上で「大名庭園を遺産登録しよう」という一風変わった総会が24日、東京湾上で開催された。
主催は大名庭園民間交流協議会。日本三名園の金沢兼六園、水戸偕楽園、岡山後楽園を中心に国指定の名勝庭園10か所が会員となり、「大名庭園を日本遺産、世界遺産に」と、大名庭園のよさを伝え続けている。
御座船と庭園、キーワードは「大名」だ。この協議会の代表幹事を務める小嶋光信氏は、こう説明した。「せっかく大名庭園を登録遺産へという話をするのだから、昔、殿様がいた船でやろうということにさせていただいた」。
会場となった御座船「安宅丸」を所有するのは、岡山県に本拠地を持つバス、路面電車、タクシーなど旅客輸送大手の両備グループ。小嶋氏は同社会長兼CEOであり、岡山後楽園を造園した岡山藩郡代・津田永忠の顕彰会で会長を務める。さらに協議会はこうした目的のため06年から毎年「大名庭園サミット」を開催。今年10月には第11回の会議を、津田永忠顕彰会が担当することになっている。
現在の安宅丸は、JR九州のななつ星、800系新幹線などをデザインした水戸岡鋭治氏が手掛けた。そんな船内で東京湾クルーズを楽しみながら、江戸前から大名庭園の今後を話し合ったのは、全国から集まった協議会会員約30人。この総会の内容を小嶋氏はこう述べた。
「これだけすばらしい大名庭園を、官のみなさんだけに任せるのではなく、もっと広く民間が支えていこうじゃないか。地域に住む人たちが、庭園を誇りに思い守り、日本、世界に向けて情報を発信していこうではないかということで、民間交流で活動を始めた」
そして会員各地を一巡し、、いよいよ大名庭園を世界遺産にという動きを具体化する。
「世界遺産は大きなハードルがある。10庭園それぞれの行政が中心となって申請しなければならない。が、まずは2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、日本遺産登録を手掛け、世界遺産に向けて、ただの提言にならないように努力したい」(前同)
会議の中では内閣参与の加藤康子氏が基調講演した。産業遺産審議委員でもある加藤氏は、働き方改革などの内閣特命担当相・加藤勝信氏の義姉。