最初の自動車はチャリオット、動力はロバ…『古今東西エンジン図鑑』

モータースポーツ/エンタメ 出版物
古今東西エンジン図鑑鈴木孝著(グランプリ出版)
  • 古今東西エンジン図鑑鈴木孝著(グランプリ出版)

『古今東西エンジン図鑑』
鈴木孝・著
グランプリ出版
定価:2400円(消費税抜き)
ISBN978-4-87687-349-4

グランプリ出版、エンジン、工学博士鈴木孝氏、とくれば『名作・迷作エンジン図鑑』を思い出す人もいるかもしれない。そんな人、あるいはベテランエンジニアにはこの本の説明は以下で済むだろう。

鈴木博士のロングセラー「名作・迷作エンジン図鑑」、満を持して第2弾発売。

しかし、本書はこれだけの紹介ではもったいない。記事見出しにあるように、エンジンの解説に「チャリオット」の紹介から始まるユニークな本である。人類技術史における動力にまつわる面白い話が読めるので、歴史好きなど文系の読者、中高生などにも読んでほしい。工学博士であり、日野自動車元副社長で、名車日野『コンテッサ』の生みの親であり、2011年に日本自動車殿堂入りした鈴木孝氏が著した本である。戦中からの歴史的な逸話や、参考文献リストはアーカイブとしても価値が高い。

また、しばしば敗戦の分析でも指摘される戦中、日本の軍部や産業界が犯した失敗、とくに工学的見地からの反省や提言が、本書の随所にちりばめられている。著者自身が自戒を込めて記述しているこれらの部分は、いまでもエンジニアは振り返る必要があるだろう。

扱っているエンジンは、自動車用に限らず、船舶、航空機、戦車、ロケットまで幅広い。半面、ハイブリッドやEVのパワートレインに関する記述はないが、かえって専門的にならずだれでも読める内容だ。戦時中の航空機や戦車のエンジンについての記載が目立つが、蒸気機関のあと、内燃機関の発達は期せずして2つの大戦と重なっている。どちらが原因か、因果関係は証明しようがないが、戦時経済が内燃機関エンジンの発達に関係していたことを考えると、むしろ当然の帰結なのかもしれない。

もちろん、蒸気エンジンの他、木炭エンジン、ヒノサムライ(モータースポーツもエンジン進化の強力なドライバーだ)、フランクリンのエンジン、ライト兄弟が使ったエンジン、H-IIAロケットなどの解説、写真や資料なども興味深い。ユンカース、Me-163・秋水、98式戦車、T-34といった「ミリオタ」が放ってはおけないキーワードもでてくる。

ぜひ、若い人に読んでほしい本である。
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《中尾真二》

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