新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「ナノテク2017」(15~17日、東京ビッグサイト)にナノテクノロジーを活用した未来の技術や素材を36展示した。その多くが製品として試作されて実証実験を行っており、なかにはゴルフクラブやボールのようにすぐにでも発売できそうなものもあった。
「今回の展示の注目ポイントはナノカーボン」(NEDO関係者)とのことで、確かに炭素繊維関連のものが多く目についた。自動車向けでは熱可塑性CFRP(炭素繊維強化プラスチック)などが紹介されていた。
なんでも新たに開発されたLFT-D工法によって、製造に時間のかかっていたCFRPを大型プレス機でたったの1分で成形してしまう。「金型の中に入れて、普通のプラスチック製品をつくるような感じで大きなCFRPの製品がつくれるのです」と別のNEDO関係者は自分の背丈ほどの試作品を指さしながら説明する。
現在、名古屋大学にあるナショナルコンポジットセンターで、トヨタ自動車、ホンダ、三菱自動車、スズキ、東レ、三菱レイヨン、東邦テナックス、アイシン精機、コマツ、共和工業が参画して、「熱可塑性CFRPによる自動車軽量化への挑戦」というプロジェクトの名称の下、研究開発が進められている。
その隣では難燃性マグネシウム合金を使った新幹線用の車両の一部が展示されていた。「この合金を使うと、新幹線の車両の重さが現在のものに比べて2/3と軽くなり、スピードが出せるうえ、車内がより静かになります」と総合鉄道車両研究所の関係者は話す。
ただ、コストの面など解決しなければならない課題がいくつかあり、それを今後数年かけてクリアし、10年後には実際に新幹線で使用されるようにしていきたいそうだ。
また、面白いところでは植物の杜仲からトチュウエラストマーという素材をつくり、それを使ったゴルフボールが展示されていた。中心になって開発を進めているのは日立造船で、かつて杜仲茶を製造販売して話題になったが、同じ植物から今度は機能性素材を開発したわけだ。
「このゴルフボールを使うと、早いグリーンでもボールを止めやすくなり、ピンデットに狙っても大丈夫です」と同社関係者。ただ狙ったところに打てるのはプロやシングルプレーヤーぐらいなので、このボールはプロや上級者向けと言ったらいいだろう。
いずれにしても、今回NEDOのブースに展示された技術や素材は、プロジェクトの期間が最長で2022年度まで。日本の産業競争力の強化をミッションとしているNEDOとしては、すべてのものが10年後には実用化され、世の中の役に立ってほしいという思いである。