「明るさ・親しみ・楽しみのある車内」にという大阪市営地下鉄の車内デザイン変更は、2031年まで続く。一昨年にデザイン一新を公表したので、実に16年も続く長期プロジェクトだ。大阪市交通局が運営する市営地下鉄は、公営地下鉄としては日本一の規模だ。それだけにデザインを一新する列車も、6~10両を一編成として、合計86編成もある。御堂筋線 12編成(完了済み2編成)谷町線 24編成(1編成)四つ橋線 18編成(デザイン製作中)中央線 2編成(2編成)堺筋線 14編成(2編成)長堀鶴見緑地線 16編成(4編成)同局では、地下鉄車両の寿命を40年と設定し、約20年経過した時点で、床下の制御装置などを取り替える中間更新を行っている。車内デザインの変更は、列車を車両工場に持ち込んで行うこの時期にしかできない。車内デザインを切り替える以前も、このタイミングで座席のバケットシート化や手すりの増設を行ってきた。「ただ、お客さまから見た車内は、あまり代わり映えしないというのが実情でした」(総務部)。そのイメージを変えるのが、路線ごとに沿線の魅力や特徴を取り入れたデザイン作りだった。例えば、御堂筋線21系の乗降ドアは、ヒョウ柄ならぬイチョウ柄。御堂筋の並木から着想して、色は新緑の薄いグリーンだ。谷町線天満橋駅近くには、日本三大祭りの1つである天神祭が開催される大阪天満宮がある。夏祭りとしても親しまれ、その奉納花火にちなんで、22系のドアにも花火が描かれている。その連結部ではドアからはみ出して、天井近くまで届く大花火が打ち上がる。中央線24系ではドアや客席の仕切り板にも魚が泳いでいるが、これは担当者が地下鉄全線の路線図が「魚に見えた」と、デザインしたものだ。デザイン変更が終わった列車には、各路線それぞれの個性が光る。デザイン担当者のエピソードは大阪市交通局が製作する動画でも見ることができる。ただ、生み出されたデザインが、そのまま31年の完了まで同一かどうかは未定だという。新たなユニークなアイデアが登場も期待できる。