【ドライブコース探訪】ダムマニア、トンネル好きにオススメ「シルバーライン」を行く

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シルバーラインのトンネル区間にて。晩秋のハイシーズンを迎えていたため交通量は閑散期に比べて格段に多かったが、それでもクルマの音がまったく響いてこない時間も結構あった。
  • シルバーラインのトンネル区間にて。晩秋のハイシーズンを迎えていたため交通量は閑散期に比べて格段に多かったが、それでもクルマの音がまったく響いてこない時間も結構あった。
  • 奥只見シルバーライン入口。遠い昔、短期間有料道路だった時代があり、ゲートはその名残りだ。
  • シルバーラインは長短19個のトンネルが続くルート。とくにルート後半のトンネルは長く、しかもトンネル同士の切れ目もごくわずかなため、10kmにわたって電源開発トンネルをくぐりっぱなしというイメージ。
  • シルバーライン奥只見ダム側出口。
  • 1.6リットルターボディーゼルエンジンを搭載したシトロエンのCセグメントコンパクト『C4 BLUE HDi』。
  • 奥只見ダムの駐車場。休日とはいえこれだけクルマがたくさん停まっているのは繁忙期ならでは。
  • 奥只見ダム駐車場にて。背景はとんじろ茶屋。みやげ物屋の店頭で店主が面白いトークをしながら活き岩魚を炭火焼にするのはここの風物のひとつ。
  • 奥只見観光センター。ここは今日でも季節によって熊汁を出す。

新潟から福島にかけて広がる広大な山岳地帯、越後山脈の真っ只中に位置する巨大ダム、奥只見ダム。世界有数の豪雪地帯で、厳冬期にはすべての道路が通行止めとなって入山することもできなくなる“秘境”だが、1年のうち8ないし9か月ほど奥只見シルバーラインというアクセスロードが開通しており、実に手軽にアプローチできる。シトロエンC4ディーゼルで奥只見シルバーライン、奥只見ダム、さらにダム湖最奥部、裏尾瀬から日光へと抜けるルートをドライブした。

奥只見シルバーラインの最寄インターチェンジは関越自動車道小出IC。東京からは途中、関越トンネルを抜けて約200kmとやや遠いが、アプローチはしやすい。ICから国道352号線を10km少々走ると、シルバーラインとの分岐にたどり着く。

R352経由でも奥只見ダムには行けるが、途中で枝折峠という長大な隘路区間を通過する。昭和時代は未舗装1車線道路でガードレールもなく、あちこちに「転落死亡事故多発 連絡方法なし」という看板が立てられていた険路だった。現在はちゃんと全区間舗装され、単に狭いだけで何の問題もなく通過できる。が、今回は22kmあまりの区間のうち実に8割がトンネルというシルバーラインを通った。

シルバーラインは元々、奥只見ダム建設のための電源開発道路として作られたもの。R352枝折峠と同様、安全に通行できるよう改良が進んでおり、四半世紀ほど前はほとんど真っ暗だったトンネル内も、普通のトンネルのように明るくはないが、ちゃんと照明が設置されていた。もっとも、壁面がコンクリートで固められていない“素掘り”の区間は相変わらず長く、幅員も広くはない。普通のトンネルとは違う、いかにも山奥へと向かう雰囲気が漂う。

今回のドライブは晩秋だったが、ここは冬季閉鎖の時期以外、各シーズンとも面白い。大山塊の深部を縦貫するトンネルゆえ、気温の変化が外界に比べて格段に小さいのだ。真夏、気温が30度を超えるような時にシルバーラインのトンネルに入ると、風呂場で眼鏡が曇るようにウインドウが全面曇る。クルマの外気温計を見ると、13度くらいであったりするのだ。晩秋はちょうどトンネルと外界の気温がウェルバランス状態。年末年始頃は逆にトンネル内のほうが暖かい状態になる。

交通量の少ないシルバーラインのトンネルをひたすら走ると、あっけなく秘境、奥只見ダムに到着する。昔は観光地として大いににぎわっていた場所だが、今は訪れる人も少なく、閑散としている。奥只見ダムより手前の銀山平という場所の観光土産店は大半が閉店。また、奥只見ダムの観光食堂、みやげ物屋も後継事業者探しに苦労しているという。それでも晩秋は1年でいちばんの繁忙期で、駐車場には結構クルマが停まっていた。

おみやげ屋さんで「けんちんそば」を食べた。使われているけんちん汁は地元企業による既製品だが、そばは手打ちの手切り。角が立っていて結構美味しかった。シーズンによっては、2軒ある食堂のうち1軒では、初夏から初秋にかけて熊汁を食べることができる。3年前に食べたのだが、ジビエにしては思いのほか獣臭が少なく、美味しかった。奥只見はダムに沈む前は平家落人の里、マタギの村として知られていたのだが、今や現役の熊撃ちは1人しかいないのだそうだ。

ダムサイトは山奥らしくとても静かな雰囲気で、尾瀬のある福島県境方向にダム湖が広がる様子は清澄だ。その湖面を時折、小さな客船が行き来する。ダム湖最奥部の尾瀬口発着場までの便や周遊便など複数のコースがある。いずれもシーズン限定だが、湖面から見る山々の姿は道路から眺めるのともまた異なる味わいがあるので、旅程に余裕がある場合、紅葉の季節でなくともぜひ乗ってみることをおすすめしたい。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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