【愛車の音質向上作戦】“ドア・チューニング”が音に効く

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オーディオテクニカのキットに含まれている「吸音材」を施工しようとしているところ。これをスピーカーの奥側の鉄板に貼り付け、不要なスピーカーの裏側の音エネルギーを吸収する。
  • オーディオテクニカのキットに含まれている「吸音材」を施工しようとしているところ。これをスピーカーの奥側の鉄板に貼り付け、不要なスピーカーの裏側の音エネルギーを吸収する。

愛車の音質向上を、“純正スピーカーのままで”に成し遂げる方法をご紹介している。前回は、今備わっているシステムのままで音を良くする、「サウンドチューニング・テクニック」を伝授した。それに引き続き今回は、「ドア・チューニング」について解説していく。

■純正スピーカーのままであっても、「ドア・チューニング」は音に効く!

最初に、「ドア・チューニング」とは何なのかをご説明しよう。「ドア・チューニング」とは、ドア内部の音響的なコンディションを整えるための作業である。「デッドニング」と呼ばれることも多い。

「デッドニング」という言葉に、マニアックな作業、というイメージをお持ちの方もいるだろう。または、高級スピーカーを使う時だけに必要な行為、と思っている方もいるかもしれない。しかし実際は、スピーカーのグレードに関係なく、たとえ純正スピーカーであったとしても、行えば必ず効果が見込める、特効薬的な音質向上作戦なのである。

まずは、ホームオーディオのスピーカーをイメージしてほしい。それらは、スピーカーユニットがボックスに取り付けられた状態で販売されている。しかし、カーオーディオにおいては、スピーカーユニットが単体で売られている。スピーカーをドアに取り付けなければスピーカーとして完成しない。

ところが…。クルマのドアは、そもそも音響パーツとして設計されていない。であるので、そこにスピーカーユニットをポン付けしても、スピーカーユニットは十分に性能を発揮できないのだ。

というわけで、スピーカーの性能を引き出すためには、ドアを、オーディオ機器として作り替えていく必要がある。それが、「ドア・チューニング」なのである。

■「制振材」と「吸音材」を用いて、ドア内部の音響的コンディションを改善!

では、スピーカーが純正のままであった場合においての、「ドア・チューニング」の具体的な作業方法をご紹介していこう。

内容的には、ライトなアプローチで大丈夫だ。スピーカー自体が非力なので、必ずしも大がかりな作業をしなければならない、ということはない。今回は特に、“リーズナブル”であることを重視しているので、お手頃な方法をご紹介していこうと思う。

例として挙げるのは、オーディオテクニカの『ドアチューニングスターターキット』(品番:AT7573R、税抜価格:4000円)だ。またはこれと同じような他社メーカーの部材を使ってもいい。

『ドアチューニングスターターキット』には、62.5×50mm/厚さ2.1mmの「制振材」が8個と、「吸音材」が2個入っている。

「制振材」は、ドア内部の鉄板のビビリを止めるために使用する。大きな音を出すと、特に低音の影響を受けて、鉄板は共振しがちである。ビリビリと耳障りな音をたてることもあれば、大きな音はたてないまでも、スピーカーの音を濁らせる何らかの異音を発してしまう。「制振材」を貼ることで、それら弊害を抑制することが可能となるのだ。結果的には、主に低音がすっきりしてくるはずだ。そしてそのことが、中・高域の音にも好影響を及ぼす。全体的にクリアなサウンドが楽しめるようになるはずだ。

次に「吸音材」である。こちらは、スピーカーの奥側のアウターパネル(外側の鉄板)に貼るための部材である。

ここでもう1度、ホームオーディオのスピーカーを思い出してほしいのだが、スピーカーボックスの奥行き寸法は、ある程度確保されているものがほとんどだ。それに対してクルマのドアは、奥行きがあまりに短い…。

これはなかなかに厳しい状況であると言わざるを得ない。スピーカーの裏側から発せられた音エネルギーが反射して、スピーカーに戻ってきてしまうからである。音エネルギーが戻ってくると、スピーカーの振動板の動きにストレスを与え、スピーカーの性能が阻害されてしまうのだ。

しかし「吸音材」を貼れば、スピーカーの裏側から発せられる音を吸収することが可能となる。擬似的に、スピーカーボックスの奥行き方向が広がったような効果が得られるのである。

■「ドア・チューニング」には、“コツ”がある!

行うべき作業の意味はご理解いただけただろうか。それを踏まえて次には、ハンドメイドで「ドア・チューニング」を行う場合の“コツ”を、いくつかご紹介していこうと思う。

1つ目のコツは、「部材を貼る場所の“脱脂”を入念に行うこと」である。後から部材が剥がれてしまっては元も子もない。なので、ブレーキクリーナー等を用意して、部材を貼ろうとする場所を、十分にクリーニングしてから作業を進めよう。

2つ目のコツは、「スピーカー付近の、平らな部分に貼ること」だ。スピーカーの近くに貼ることについては、疑問に思う方は少ないだろう。エネルギーの発生源の側ほど、共振は発生しやすい。そして、なぜに“平らな部分”なのかというと…。それは、“平らな部分”は強度が弱いから、である。プレスラインが入っていると、その部分はまだ強度が確保されているが、“平らな部分”は弱く、ビビリやすいのである。

3つ目は、「左右のドアに、同一な作業を施すこと」である。ホームのスピーカーでも、左右のボックスは、形状も内部構造も、コンディションが同一だ。左右で鳴り方が異なってしまうのは、ステレオの原理から言って絶対にNGである。カーオーディオでもそれはもちろん同様だ。貼る枚数、貼る場所等、左右のドアでやり方を揃えよう。

4つ目は、「制振材は、できるだけ強力に“圧着”すること」。制振効果を上げるためには、“圧着が命”なのである。

なお、ドアの内張りパネルを外すと、インナーパネルのほぼ全面に、雨水の浸入を防ぐためのビニールシートが貼ってある。ここでご紹介している『ドアチューニングスターターキット』での作業では、ビニールシートを外す必要はない。ビニールシートの内側に貼りたい場合は、そのあたりを一旦はがしてから作業を行うか、その付近に切り込みを入れ、そこから鉄板表面にアクセスして作業を行えば良いだろう。そして作業後にまたビニールシートを戻したり、切り込みを入れた場合にはその部分をビニールテープ等で塞いでおけがOKだ。

なお、オーディオテクニカでは、総合的に「ドア・チューニング」を行えるキットや、ピラーやトランクルームの静粛化を図れるキットも用意しているので、ご興味があれば、それらもチェックしてみよう。

また、作業を“プロショップ”に依頼するのも、もちろんアリだ。そのほうが、確実な効果が得られるだろう。“プロショップ”ごとで、ライトなメニューも用意されているので、お近くの“プロショップ”のHPを覗いてみるなり、問い合わせてみるなりしてみよう。

将来的にスピーカー交換を考えている場合でも、先に「ドア・チューニング」を行っておいて無駄にはならない。まずは、純正スピーカーのままで「ドア・チューニング」にトライして、“ドア内部の音響的コンディションを整える”という行為が音にどれだけ効くのかを、ぜひ、ご体験していただきたい。

“純正スピーカーのまま”、愛車のサウンドを良くする方法とは!? 第2回「“ドア・チューニング”を実施して音質向上!」

《太田祥三》

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