レース史上類を見ない100回目の大会となった今年のインディ500。チケットはソールドアウトという異常な盛り上がりを見せた。
晴天に恵まれた決勝日、ウィナーズ・サークルに立ったのは誰もが予想しなかったアメリカ人ルーキーだった。
レースは序盤からポールシッターのジェームズ・ヒンチクフィフ、ライアン・ハンターレイ、タウンゼント・ベルらによって目まぐるしいトップ争いが展開された。200周レースのそのリード・チェンジは実に54回と100回の歴史上2番目の多さだ。
特に終盤のトニー・カナーン、ジョセフ・ニューガーデン、カルロス・ムニョスらのよるトップ争いは見応えあるものに。
117周目の一斉ピットストップでハンターレイとベルが同士討ちともとれる接触を演じたアンドレッティ・オートスポートは一瞬勝負権を失ったように見えたが、そんな中、チームで残された22歳のムニョスはたくましくもライバルたちをことごとく打ち負かしてチェッカーへと突き進んだ。
163周目の佐藤琢磨のクラッシュによって出されたイエローコーションで、164周目に各車はピットで燃料補給を行う。しかし、その時点で残された周回数は36周もあり、当然のことながらフィニッシュ直前のスプラッシュ・アンド・ゴーによる燃料補給は必要と思われた。ムニョスも残り4周で無難なピットストップをこなし、優勝をほぼ手にしたかに見えた。
ところが彼の前を走る一台のマシンがいつになってもピットへは向かおうとしない。昨年、F1をも経験してきたアメリカ人ルーキーのアレキサンダー・ロッシだ。
ロッシが所属するのはマイケル・アンドレッティとブライアン・ハータらとの共同運営チーム、アンドレッティ・ハータ・オートスポート・アガジャニアンで、いわば彼もまたチームメイト。燃料を絞りに絞り、周回遅れのチームメイト、ハンターレイに風よけになってもらう援護射撃も受け、ロッシは不可能と思われた36周の距離に挑んだ。
最終ラップに入った時には燃料はもう底をついていた。しかし、惰性でチェッカーを受けたとき、2位のムニョスはまだ4秒余り後方だったのだ。
今シーズン、シボレーの後塵を拝してきたホンダ・エンジンは記念すべき第100回大会でウィナーズ・サークルに返り咲いた。高い燃費性能によって勝ったわけではあるが、正攻法で2位のムニョスもまたホンダ・ユーザーであったのだから、この勝利は必然といえよう。
164周目のクラッシュにより26位に終わった佐藤琢磨だったが、レース終盤には6位にまで順位を上げ大いに盛り上げた。