スズキが26日に発表した2列シートのコンパクトミニバン『ソリオ/ソリオ バンディット』のエンジンは排気量1.2リットル自然吸気の「K12C」型。1気筒当たり2本の燃料噴射装置を持つ「デュアルジェットエンジン」である。
最高出力91ps/6000rpm、最大トルク118Nm/4400rpmというスペック自体はコンパクトカー『スイフト』のデュアルジェットエンジン「K12B」と同じだが、燃料を燃やして得られる熱をどのくらい動力として取り出されるかを示す熱効率は、最高値で従来の37.1%から38%へと、ストロングハイブリッド用のミラーサイクルエンジンを除く量産ガソリンエンジンとしては世界トップランナーレベルに向上した。
そのピーク値以上に注目すべきは、JC08モード走行時の平均熱効率で、34%から35%へと引き上げられたという点。ソリオのトランスミッションは副変速機を使うことで超ワイドな変速レンジを実現させたジヤトコ製のCVTだが、それだけで35%を達成するのは無理だ。エンジン側の熱効率が高い運転範囲が広いことがうかがわれる。
K12Bの改良型として登場したK12Cだが、設計変更はかなり大がかりだ。圧縮比は12:1から12.5:1へと高圧縮化。吸気ポートの形状変更によるシリンダー内の空気の渦を最適化したことや、シリンダーヘッドの冷却性能向上による耐ノッキング性能の強化。ローラーロッカーアーム採用や補器ベルトの低張力化による摩擦抵抗の低減など、地道なリファインを徹底的に施している。
スズキは2020年にJC08モードにおける平均熱効率40%という目標を立てている。これは今日の高性能ディーゼルと同等で、途方もない数値だ。
「もともと40%というのは、達成困難な目標です。35%まではたどり着けましたが、ここから先の難しさは今までとは次元が違う。もっとも、普通にやっていて達成できるような数字であれば、わざわざ目標として発表しません。これはわれわれにとって、まさにチャレンジなのです」
K12Cエンジンの開発に携わったエンジニアのひとりはこう語る。
「さらに熱効率を上げるうえで重要な項目のひとつは、リーン(希薄)燃焼を有効に使うということ。そのときに出る排出ガスをどう浄化するかが当面の課題となりそうです」
が、スズキはライバルと異なり、ここまでミラーサイクルや直噴などの技術を使うことなしに熱効率の引き上げを達成してきており、伸びしろも余分に残されている。フォルクスワーゲンとの提携が破談に終わり、当面単独で開発競争を勝ち抜かなければならなくなった、いわば背水の陣のスズキが今後、エンジン技術をどのように進化させるか、要注目である。