北の大地に保存された「赤い電車」を訪ねてみた…JR北海道の711系

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クハ711-103側から見た2両の保存車。「くる来る電車ポプラ号」のヘッドマークも装着された。
  • クハ711-103側から見た2両の保存車。「くる来る電車ポプラ号」のヘッドマークも装着された。
  • 北海道らしい大空をバックに2両の赤い電車を収めることができる絶好のロケーション。
  • クハ711-203側から見た保存車。写真右手の道路からは、屋根上を俯瞰して見ることもできる。
  • 現役と見紛うばかりの車内。休憩スペースとして開放されている。
  • イベント限定で開放されたクハ711-203の運転台。盗難予防のためブレーキハンドルは外された状態。
  • クハ711-203にはインターネット募金に応じた人々の名前が掲示されている。
  • クハ711-103に取り付けられた懐かしい急行「かむい」の方向幕。
  • クハ711-203には「江部乙」の方向幕が。「マリンライナー」の愛称板は有志からレンタルされたもの。

今年3月のダイヤ改正で、「赤い電車」ことJR北海道の711系電車が引退してから、およそ5カ月。インターネット募金の成果により保存が決まった2両の711系が、8月7日から北海道岩見沢市内のファームレストラン「大地のテラス」で公開されている。

公開開始から3日間は「赤い電車まつり」と題したイベントが開催されるということで、最終日の8月9日に訪ねてみた。711系が保存されている「大地のテラス」へは車で行くのが一般的だが、公共交通機関を利用して行くこともできる。JR岩見沢駅隣の北海道中央バス岩見沢ターミナルから毛陽交流センター行きに乗り、旧渡船場停留所で下車。そこから道道30号線沿いをゆっくり歩いて20分ほどで着くことができた。

保存されている2両は、S-103編成を組成していたクハ711-103とクハ711-203。ともに冷房化改造車で、状態はまだまだ現役と見紛うほど良好だった。

ただ、車両銘板や車内の車番プレート、メーカープレートなどのパーツが消えていた。引渡し前に外されていたということで、方向幕や種別幕もない状態だったが、こちらは有志からの提供により取り付けられた。

車内は、運転台の一部や洗面所、トイレが備品庫代わりに使われていること以外は、現役当時のまま。車内広告のステッカーもそのまま貼られていた。クハ711-203のロングシート部には、インターネット募金に応じた人々の名前が掲示されている。711系の車内はイベント終了以後も10時から17時まで開放されるという。

この日は気温が25度を越えていたが、窓が開け放たれた車内は涼しい風が吹き込み、まったく暑さを感じなかった。せっかくなので、イベント限定の「赤い電車弁当」を車内で食べてみることに。窓の開いたボックスシートで食べる弁当はまさに駅弁感覚で、往時の711系の旅がリアルに甦ってきた。子供連れの家族も大勢乗り込んでおり、あちこちから「懐かしいね~」の声も聞こえてきた。

イベントが開催された3日間は、有志から提供された「くる来る電車ホプラ号」のヘッドマークや「マリンライナー」の愛称板、方向幕、種別幕を取り付けての撮影会も開催。普段は閉鎖するという運転台も開放された。初日に行われたライトアップも再び行われ、闇に浮かぶ美しい711系を拝むこともできた。

711系が保存されている背後には北海道らしい田園風景が広がっており、空をバックに車両を撮影するには絶好のロケーション。レストラン「大地のテラス」からは遠目に711系を眺めながら食事をすることができる。

インターネット募金を主導した北海道鉄道観光資源研究会の会長・永山茂さんの話によると、車両の設置はそのことを計算に入れて行われたという。手前にはヒマワリ畑が広がっているので、これからの季節、満開のヒマワリを入れて赤い711系とのコントラストを楽しむことができるそうだ。「PRの効果もあって、3日間で推定1000人以上の来場者があった」と永山さん。「赤い電車」を愛する人々の保存活動が実を結んだ成果を噛みしめている様子だった。

711系が保存されている「大地のテラス」は、サラダビュッフェと「ジェラスコ」と呼ばれるブラジル料理を提供するレストラン。農業生産法人の道下産地が経営する。営業時間はランチが11~15時(入店は14時まで)、ディナーが18~21時(入店は19時まで)。車利用の場合、道央自動車道岩見沢インターチェンジから道道30号線を経て約10分。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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