先代は車内外に隠れうさぎキャラが50匹以上もいて、それを見つけるクイズも話題になった『アルトラパン』。女性ユーザー比率は90%と、ほぼ女性向け軽ハッチバックモデルだった。
新型はその女性ユーザーに向けたデザイン、使い勝手をさらに向上させるため、社内に女性だけで構成するワーキングチームを発足。女性ユーザーの声を最大限、取り入れているのが大きな特徴だ。
基本骨格は定評ある最新の『アルト』のもの。プラットフォームやボディ、足回り、エンジンなど徹底した軽量化が計られているのも同様で、なんと先代比で約120kg、つまり大人2人分、スリムな女性なら3人分も軽くなっているのだ!!
それに加え、ワイドレンジな改良型副変速機付きCVT、スズキ自慢のエネチャージ、13km/h以下で作動する新アイドリングストップなどの相乗効果でJC08モード燃費は先代比約37%アップの35.6km/リットルを達成しているのだから驚かされる。ミッションはL/S/XグレードにCVT、ベースグレードのGにシングルクラッチの2ペダルMT=実は評判のいいASGが組み合わされ、こちらのモード燃費は29.6km/リットルとなる。
エクステリアはかわいさをアピールする“丸四角い”プロポーション。ルーフ~Cピラー、ドアミラーを白く塗り分けた2トーンボディ、ブラウンとネイビー色があるフェンダーアーチモールの3トーンボディも個性的だ。
ベルトラインを35mm低め、周辺視界、取り回し性に配慮したインテリアはまさにリビング、マイルーム感覚。シート、ドア内張りには先代同様、往年のアルマーニを思わせる!? 質感の高いファブリック、またはキルティング表皮がおごられ、天井もまた凝ったキルティング風デザインでまとめられている。全体的な色味はベージュ系で明るく、淡色のウッド調パネル、助手席前のティッシュボックスがすっぽり入り、隠せる引出し式インパネボックスがマイルーム感覚を演出する。“加湿機能”を備えたナノイー付きオートエアコン、UV99%カットガラス、500ml紙パック(子供用でストロー併用とか)が入るボトルホルダー、豊富な収納など、装備類もまた女性ユーザー、子育てママの要望に応えたものと言っていい。
大人の女性にはどうかと思うが(もちろん男性だとかなり恥ずかしい?)、キャラクターがアニメ声で挨拶し、お知らせをしゃべり、メロディを奏でてくれる音声機能付メーターも完備する。
ラゲッジは開口高を先代より3cm低め、重い荷物の出し入れ性を改善。開口幅も5~50mm拡大。ベビーカーなどの積み込み性も向上している。
ここで試乗したのは最上級のXグレード。価格は2WDで138万9960円だ。新型では隠れキャラのうさぎが15匹程度に減らされてしまったというが(何匹いるかは非公表)、そのかわいいうさぎのイメージとは裏腹に、走りは実に男性的というか、しっかりしたものだった。パワステは先代が「やや重すぎ」との声もあったため、軽めに設定されたはずだが、それでも軽すぎない適度な重さ。これならカーブや高速走行も安心できる。このあたりのさじ加減は見事だ。
前席のかけ心地はまさにソファ感覚で、しかし乗り心地はしっかり引き締まったタッチ。かつての軽自動車とは別格の上質感、心地良さあるものだ。エンジンは燃費性能を追求したため、ゴロゴロしたフィールが気になるシーンもあるにはあるが、NAでも動力性能は十二分。どころか高速道路を、筋力隆々の野うさぎのようにスイスイ走ってくれるのだから驚く。これならロングドライブでの運転者、乗員のストレスも最小限だろう。
ただし、120kgもの軽量化を計った…という軽さの印象は薄い。むしろしっかり安心して走れる運転感覚に好感を覚えた。軽すぎ感は、高速道路などでかえって不安を感じさせるものなのだ。
そうそう、ラパンを手に入れたら、キュートな内外装のオシャレっぽさを自慢し、うさぎの数を数えてもらうために、女友達を誘ってドライブする機会も増えそうだが、ならば買うべきはホワイト2トーンカラーが選べ、シート地などがグレードアップされるX、Sグレードだ。
そしてお友達を後席に乗せてあげれば「足元広い~っ」という感動の声が上がるに違いない。なにしろ身長172cmのボクのドライビングポジションの背後でさえ、ひざ回り空間は先代の18cm(それでも広い)から、24cmまで広がっているからだ。ちなみにそのスペースはBMW3シリーズで19cm、ベンツEクラスで21cm、アウディA6で23cmなのだから、いかに広いかが分かってもらえると思う。
そんな新型ラパンは先進安全性能もばっちり、なにしろ衝突軽減ブレーキを含む先進安全装備を全車に標準化しているのだ(スズキ初)。しかも2WD車は全車免税対象。安全性・経済性もまたハイレベルなのである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
ペットフレンドリー度:★★
青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行なっている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。