【メルセデスベンツ S550クーペ 試乗】甲冑を着込んだエレガントクーペ…中村孝仁

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メルセデスベンツ S550クーペ
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タイトルが少しおかしい…と思われるかもしれない。エレガントなはずのクーペが甲冑を着込むって、どういうこと?と。恐らくは読んで頂ければわかると思う。これが今のメルセデスの凄さ、そして『S550クーペ』の奥ゆかしさであることを。

これまで『CLクラス』と呼ばれてきた、セダンの『Sクラス』をベースとするクーペモデルが、再び「Sクラス・クーペ」として戻ってきた。W126時代のSEC以来だろうか。すでにエンジンをはじめとするドライブトレーンに関しては、CL時代にダウンサイズされた4.7リットルツインターボを搭載しているから、ここに関しては不変である。トランスミッションも7GトロニックATである。

ではどこがどう変わったか。実はこれが甲冑に繋がる。スタイルはCL時代にも増してのびやかに。そしてエレガントなシルエットになったと思う。しかし同時にその顔つきはこれぞメルセデスのフラッグシップクーペだという強烈な印象を残す。とりわけ大きく開いたグリルデザインは、以前にも増してメルセデスというブランドを強調し、凄みすら感じさせるデザインになったから、この部分に関してはエレガントさを割り引いて考える必要がある。

のびやかという表現は少し誤解を与えるかもしれないが、実はリアのオーバーハングはCL時代よりも80mm短縮され、その分全高を40mmも下げているから、結果としてはほぼ同じようなプロポーションとなるのだが、低さは自然と伸びやかさを強調するというわけだ。

注目して欲しいのはヘッドライト。何と片側に47個ものスワロフスキー・クリスタルが埋め込まれている。メルセデスのチーフデザイナーであるゴルデン・ワーグナーは、目力の重要性を特に強調するデザインを進めており、このSクラスクーペに限らず、近年のメルセデスデザインはヘッドライトに大きな特徴がある。それにしても47個ものスワロフスキーとは…。

甲冑とはてんこ盛りに盛り込んだ安全装備の数々だ。上記したヘッドライトにしても、単なる飾り物的美しさだけではない。CL時代から装備されていたインテリジェントライトシステムはキセノンからLEDに変わり、ハイビームにしたまま対向車を検知すると、自動的にロービームに切り替えていたアダプティブハイビームアシストは、ロービームに切り替えることなく、対向車部分だけを制御して自らの進行方向はハイビームのまま。同様に前方にクルマがいても、そのクルマの部分だけを減光してまぶしくないようにし、周囲はハイビームのままというアダプティブハイビームアシストプラスに進化。

BASプラスというブレーキアシストは、突然目の前に現れた危機すらも回避する手助けをしてくれる。勿論従来からあるディストロニックプラス、プリセーフの概念はすべて搭載。インテリジェントナイトビューからマジックボディコントロールに至る、ありとあらゆるドライバーサポートの数々が搭載されている。これを甲冑と表現したわけだ。

実は新機能であるダイナミックカーブ機能を含むマジックボディコントロールは、S65AMGに装備されるだけでS550クーペには設定がない。実は甲冑はまだあって、横風を受けた時にそれを自動で感知してコースを逸脱しないよう、ブレーキ制御を行うクロスウィンドアシストや、ワイパーブレードの両面からウォッシャー液をワイパーの動きに合わせて噴射するマジックビジョンコントロール等々、一度は恩恵にあずかってみたい装備が枚挙に暇がない。

少ない時間でこれらを試すことなどおおよそ不可能で、ただひたすら、極上の空間で極上の乗り味を体感しただけだった。そういえばシートにしても自分の体型に合わせてショルダーからランバーなどのサポートをすべてきめ細かく調整でき、挙句の果てにはコーナリング中に傾いた側のサイドサポートを締めこんで、体をサポートする機能まで持っている。口さがない人にとっては余計なお世話と言いたいだろうが、一度味わってしまった後でそう言えるかどうか。パーフェクトな仕上がりというのはこういうことを言うのだと思う。あとはそれを好きになるか嫌いになるかだけ。乗って走って、その走りに文句を言える人はまずいないのではないかと思う。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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