本の街・神田神保町の大型書店「書泉グランデ」(東京都千代田区)には、鉄道書を専門的に扱うフロアがある。今年8月からは「テツナイト」と題した鉄道トークイベントを実施しており、12月4日には「テツナイト臨時特別第1号」が開催された。
今回の「テツナイト」は、イラストレーター・千原櫻子さんのコミックエッセイ「相方が鉄ちゃんでして…」(洋泉社)の発売を記念したもの。本書では、鉄道マニアの夫(相方)に付き合わされて20時間以上も列車に乗りづめになったときのことなど、二人のやりとりや行動が面白おかしく描かれている。
「テツナイト」としては2回目の開催になるが、12月17日に「テツナイト VOL.2 2014 冬」を開催することが決まった後、「相方が鉄ちゃんでして…」の関係者から「発売日にあわせて何かやりたい」という話が持ち上がり、「テツナイト」の「臨時列車」扱いでイベントを開催することになったという。
「テツナイト臨時特別第1号」は18時頃から開始。千原さんのサイン会とミニトークが行われた後、「相方が鉄ちゃんでして…」にコラムを寄せた高嶋修一(青山学院大学経済学部准教授)さんら4人によるトークリレーが行われた。
高嶋さんは「TRAMは路面電車にあらず」と題し、ベルギー近距離鉄道の事例を紹介。日本では「トラム=道路上の軌道を走る電車(路面電車)」のイメージが強いが、ベルギーの近距離鉄道ではディーゼルエンジンを動力とするトラムや、道路だけでなく専用の敷地に設置されたレールも走るトラムが運行されていることを、現地の写真を交えながら話した。
また、中規模の都市交通システムとして近年注目を集めているLRT(軽量軌道交通)については「近距離鉄道をバージョンアップして復活させたようなものではないか」とし、「日本でも、柔軟な発想で新しい交通機関を作ったら面白いことになるんじゃないか」と述べた。
「相方が鉄ちゃんでして…」のデザインを担当し、「猫だらけ」(洋泉社)などネコの写真集を出しているグラフィックデザイナーの南幅俊輔さんは、鶴見線で撮影したネコの写真を見せながら「猫トーク」を展開。南幅さんによると、鶴見駅(横浜市鶴見区)と東京湾岸の工場地帯を結ぶ同線は駅に生息しているネコ(駅猫)が多く、南幅さん自身もネコの写真を撮りに鶴見線を訪ねることが多いという。
このほか、会場では交流3線式で知られるドイツ・メルクリン製の鉄道模型が展示されていた。千原さんの「相方」こと田中由行さんが、「テツナイト」の開催にあわせて提供したもので、ドイツ鉄道(DB)の部分低床式気動車などがHOゲージの線路を駆け巡った。ドリンクも会場内で販売されており、コップを手に持ちながらトークに聞き入っている参加者の姿も見られた。
書泉グランデの担当者によると、同店では以前から鉄道にちなんだイベントが随時実施されており、出版社が主体となって企画された販促イベントも行われている。これに対し、「テツナイト」は書泉グランデが自ら企画。「販促とは別に、鉄道を楽しむためのイベントをやりたい」という思いから「テツナイト」を企画したという。
「臨時列車」ではない「テツナイト VOL.2 2014 冬」は、12月17日の18時から21時まで開催される予定。トークショーでは公募により若桜鉄道(鳥取県)の社長に就任した山田和昭さんや、トラベルライターの横見浩彦さんが出演する。担当者は「今後も3回、4回と『テツナイト』のようなイベントを続けていきたい」と話した。