トヨタ自動車が発売した新型ミニバン『エスクァイア』には、『ノア』『ヴォクシー』と同様に福祉車両の「ウェルキャブ」が設定される。介護が必要な方を、車いすに乗せたまま昇降ができるウェルキャブの「車いす仕様車」には、福祉車両として独自の考えが盛り込まれている。トヨタ自動車製品企画本部、ZUプロフェッショナルパートナーの田原定利氏に話を伺った。
「ノア、ヴォクシーの考えを受け継ぎ“普通のクルマ化”というキーワードで開発した。福祉車両としてだけではなく、普通車両としても使い勝手の良いクルマを目指した」。続けて「折りたたみのスロープ板に前倒し機能を与えることで、荷物の積み降ろしがラクになり、3列目シートもそのまま使える。また、車いすを固定する位置には、オプションで普通のシートを後付けできるようにしたため、7人乗りの“普通のミニバン”としても難なく使える」と田原氏は説明する。
また、今回の車いす仕様車は、車いすの昇降時の利便性に細部まで気を使った。「ベーシックのエスクァイアと違い、リアにエアサスペンションを装備している(ノア、ヴォクシーも同様)。スロープを引き出した際に、車両後部自体もチルトダウンさせることで、スロープ角度が9.5度となる。介護をする方には女性が多いため、この角度には非常に気を使って設計した。10度を超えてしまうと、車いすを乗せる際に力が余計に必要となり、雨の際などに、ウィンチを使わず急いで乗せたい場合は苦労する。またエアサスは車高を保持する機能があり、重量が増しても快適な乗り心地を確保した」(田原氏)。
さらに「スロープ自体にも多重ロックを施し、手を挟むなどの事故が起こらないよう安全にも配慮した。また、前倒し状態からの引き起こしは、バネの力である程度自分で起きるようになっているため、ここにも余計な力を必要とせず、女性でも使いやすいように配慮している」と田原氏は述べた。