JR東日本が鉄道博物館の大規模リニューアルを発表し、その魅力がワイドショーなどで採りあげられているいま、民間が運営するミュージアムの派手な展開の影で、自治体などが管理・運営する“無料の交通公園”が親子に静かに支持されている。
平日の午後、東京都江戸川区の今井児童交通公園は、自転車で駆けつけた男子5人組や女子3人組、幼児の手を引くママたちでにぎわっていた。
「仲良しママたちで集まるときこの公園を利用する。子どもに信号の赤、青、黄色の役目、横断歩道の渡り方、歩道と車道の区別とかを教えながら、ママたちでおしゃべりを楽しむという感じ。実際の道路脇だと危ないから」と話すのは、同区瑞江に住む30代の女性。
足踏み式ゴーカートに乗ってはしゃぐ小学生は「友だちとよく来る。この公園で練習して自転車に乗れるようになった。将来クルマ? うーん、運転はしてみたい」と話していた。
2008年の静岡大学生涯学習教育研究誌「交通戦争の残影 交通公園の誕生と普及をめぐって」(金子淳氏)には、交通公園についてこう記されている。
「交通公園とは、公園内に通常の道路とともに信号機、横断歩道、道路標識などを設けて疑似的な交通環境を再現し、遊びながら交通知識や交通ルールを学ぶための公園である。1960年代から70年代にかけて深刻な社会問題となっていた第一次交通戦争の解決という政策的な課題を背負って、当時の建設省の主導によって各地の自治体で設置された「第一次交通戦争対策の制度的産物」とでもいうべき存在であった」
こうした交通公園は各地にある。たとえば「東京都 交通公園」などと入力し地図検索すると、多摩市役所交通公園(多摩市)、杉並児童交通公園(杉並区)、大森西交通公園(大田区)、大泉交通公園(練馬区)など、同様のスポットがヒットする。
都営バスや消防車などの車両が保存・展示されている新宿交通公園(葛飾区)を歩いていると、楽しそうに語る親子に出会った。
「いつからかわからないけど、交通公園をめぐるのが趣味になってしまった。まずは都内のすべてに行ってみたい。そのあとは、地方の交通公園をめぐる旅をしてみたい」