【マツダ魂動デザインへの道】形容詞を形にするクレイモデラーの存在

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マツダの「魂動」デザインは、チーターの一瞬の動きをクルマに落とし込んでデザインしているが、そこにはクレイモデラーという重要なポジションの人たちがいて初めて成り立っている。

クレイモデラーとは、クレイという粘土の一種でクルマを立体的に作り上げていく人たちで、通常はデザイナーが二次元のスケッチを描き、それを立体的に表現する場合がほとんどである。

しかし、「我々が美しさを創りだし、デザインをアートの領域にまで高めたいという想いから、マツダのデザインでは独自のデザインプロセスがある」とはマツダデザイン本部アドバンスデザインスタジオ部長の中牟田泰さんの弁。

通常のカーデザインの場合は、デザイナーが絵を描き、それをベースにスケールモデルを作ってチェック。その後フルスケールモデルで様々なレイアウトなどを詰めながら量産化される。「昔のマツダもこういうデザイン工程を踏んでいたが、『靭(SHINARI)』以降、我々はこの前段階として、美しさを追求するためのオブジェの“仕込み”のプロセスが加わった」と中牟田さん。「料理人もプロフェッショナルになるとこの仕込みに時間をかける。ここでしっかりした仕込みをすることによって、我々は次のステージの表現を高めていくことができるようになった」という。

このデザイン的な仕込みとは何か。「まずアートの世界から入るのだ。例えば、“艶めき”や“溜め”などそれぞれの動きや感情に関するキーワードをもとに、クレイモデラーが自分なりに想像、クリエーションしながら形を作り、そこからクルマの形につながるインスピレーションを湧き立たせていく」と中牟田さん。

「我々のクレイモデラーは、神業的な匠の職人で、彼らの手にかかるとどんな造形も生き生きとした生命力あふれるものに変わっていく。彼らは我々の宝だと思っている」と中牟田さんは評価する。

そして、「デザイナーもそれに感化されて、ただ単なるクルマのデザイン、スケッチを描いているわけではなく、よりスピーディな形というものはどういうものなのかということを二次元で表現するようになった。そのことからよりスピード感や美しい表現が、これまでとは違ってきており、デザイナー自身がより深くわかるようになった」と述べ、「モデラー、そしてデザイナーお互いに競争し合いながらマツダはデザインしている」と語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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