「現在日本以外にもタイ、中国、オランダ、アメリカに当社のターボチャージャー生産工場があります。そこで生産されているターボチャージャーは、ダイムラー以外は世界中のほとんどの自動車メーカーに供給しています」
そう語るのは三菱重工 機械・設備ドメイン自動車部品事業部ターボ技術部次長の佐俣 章氏だ。
生産工場は拠点により、ベアリング部にタービン&コンプレッサーホイールがセットされたカートリッジを組み立てる工場と、タービンハウジングとコンプレッサーカバーまで装着してターボチャージャーを完全に作り上げる工場。そしてカートリッジ工場から運び込まれたカートリッジにタービンハウジングとコンプレッサーカバーを装着して、自動車メーカーに納める工場の3種類がある。
相模原地区工場はカートリッジを組み立てる工場と、ターボチャージャー完成品を作る工場の機能を併せ持っている。さらに世界のマザー工場として先進技術を開発する拠点でもある。カートリッジを生産するには高い精度の生産設備が必要で、そこで働く人間にも高い技術力が求められるのだ。
「自動車メーカーによってはターボチャージャーユニットではなく、カートリッジでの供給を求めるところもありますね」
それはタービンハウジングをエキゾーストマニホールドと一体成型する場合や、自社でスクロール形状にこだわりたい場合など、様々な理由があるようだ。それでもカートリッジ部分は設計や部品の製造、組み立てに様々なノウハウがあり、自動車メーカーはなかなか内製する訳にはいかないらしい。
ダイムラーはIHIとターボメーカーを合弁で設立しており、これまではそこから供給されてきたため、三菱重工との取引はなかったのだとか。現在そのターボメーカーはIHIの完全子会社となったため、仕様によっては今後、三菱重工も供給していく可能性が出てきそうだ。自動車市場のアナリストたちの予想によれば、ターボチャージャーの需要はこれからますます高くなっていくとされている。
三菱重工は今年度、生産能力一杯の646万台のターボチャージャーを供給する予定。これは2012年度の1.5倍近くにもなる。さらに来年度以降は増え続ける需要に対応するため、さらに生産能力を引き上げる方針だ。何しろ2016年度の生産は、すでに契約分だけでも890万台! さらに現在商談中の分も含めれば928万台の生産が見えてきている。そのため2016年度までに乗用車用ターボチャージャーの生産能力を1000万台に引き上げる計画なのだ。