【ドゥカティ モンスター821 試乗】“怪物”から“友達”に、扱いやすく心優しきモンスター…和歌山利宏

モーターサイクル 新型車
ドゥカティ モンスター821
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ドゥカティのネイキッドモデルである『モンスター』は、そのシリーズの旗艦モデルである『1100Evo』が『1200S』へとフルモデルチェンジされ、試乗記でもすでにお伝えしている。そして今回新しく登場したのが、そのミドルバージョンとなる『モンスター821』だ。

スーパーバイク用のエンジンであった「1198 テスタストレッタ」のオーバーラップ角を41度から11度に小さくした「テスタストレッタ11°」エンジンを、トラス部をコンパクト化し前後気筒のシリンダヘッドに懸架点を持つ、新設計のフレームに搭載するという モンスター1200S の基本構成をそのままに、スケールダウンしているのだ。

ただ、専用設計の部分も多く、片持ち式から両持ち式となったスイングアームを短くして、ホイールベースを31mm短縮。リアタイヤもワンサイズ小さく、ライセンスプレートをリヤアクスルマウント支持から、一般的なシート後部支持としているため、見た目にも車格がひと回りコンパクトになり、フォルムも往年の モンスター に近付いた印象がある。

ただ、数値上では 1200S 比で車重が3.5kg軽いとはいえ、それは決定的な違いを生むほどのものではないし、ライディングポジションも全く同じで、重心位置や前後分布荷重は 1200S からそのまま引き継がれているので、乗車フィーリングにそれほどの差異はないと考えるのが自然である。

ところが、821 は跨っただけでも軽く、足を着いてバランスを保つのも素直だ。モンスター らしい幅広ハンドルの個性を程良く残すライポジさえも自然になった気がするほどで、明らかにフレンドリーである。

ちなみに、今回のイタリアでの試乗車は欧州仕様で、シートも標準品だが、国内仕様車には40mm薄いローシートが装備されるので、小柄な女性でも足着き性の心配はなさそうだ。

そして、発進しスロットルを開けていったときの反応が、驚くほどスムーズで優しい。ドゥカティの多くのモデルはビート感を強烈に伝え、スパルタンさを訴えてくるが、821はこれまでのドカにないフレンドリーさである。

クラッチレバーも軽く、身構えずに乗れる。エンジン低回転域でのスムーズさも、エンジンの基本が同じ 1200S を上回り、6速で50km/hまで落としても、ギクシャクしない。

さらに、ブレーキの効き味も優しい。320mm径ディスクと、ラジアルマウントのモノブロックキャリパーをダブルで装備しているから、十分に強力なのはいうまでもないが、低入力時のレバーの引きしろに十分な幅があり、握り味もやんわりとしていてコントロール性が高く、扱いやすいのだ。

そればかりか、ハンドリングも軽快で素直である。これからすると、1200S は低速走行でハンドリングが一瞬粘る感があるが、821 はバイクが自然にバランスをしてくれる。

確かに、ワインディングロードでは、1200S のほうが自身で曲げていく面白さや、コーナリングの奥深さに勝るだろう。が、逆に言うと、821 は素直でライダーへの依存度もさほど高くなく、誰もが楽しみやすいものとなっている。価格も含め、現実を追及したモデルになっていると言っていい。

和歌山利宏|二輪ジャーナリスト
1954年生まれ、1975年にヤマハ発動機に入社し、様々なロードスポーツバイクの開発に携わり、テストライダーも務める。また、自らレース活動も行ない、鈴鹿8耐第5回大会では4位入賞の成績を持つ。現在は二輪ジャーナリストとして執筆活動、ライディングインストラクターなど多方面で活躍中。

《和歌山 利宏》

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