23~24日に開催された全日本選手権スーパーフォーミュラ(SF)第4戦もてぎ。エンジンが後半戦仕様に切り替わったところで、前半戦苦闘していたホンダ勢が、新人の野尻智紀を筆頭に巻き返しの機運を感じさせている。
直噴2リットル直4ターボという新規格での戦いとなった今シーズンのSF、前半戦は明らかにトヨタ勢が優勢だった。あるレースで展開的な不運があって後方からの追い上げを強いられたトヨタ勢ドライバーが、「他社エンジンのマシンを抜くのは簡単でした。申し訳ないけど」とコメントしていたこともあったくらいで、戦闘力の差は明白。しかし、両社とも第4~7戦の後半戦仕様へとエンジンをバージョンアップさせた今回のもてぎ戦で、ホンダ勢にも戦える雰囲気が出てきたようだ。
ホンダ勢のある選手は今回のレース後、「単独で走る予選ではトヨタ勢との比較はわかりませんでしたけど、レースを走ってみて、エンジン的にはほぼ互角といえるところまで来たと思えました。以前のように、楽勝で抜かれることはなくなりましたからね」との旨をコメント。レース全体の概況を見ても、どうやら大きな差はなくなったと見てよさそうに思える。ホンダの開発リーダー、佐伯昌浩氏も「今回のレースでは大きな手応えを得られました」とのコメントを発表している。
ただ、どうもホンダ勢は“ある条件が重なるとエンジンストールしやすい”問題を内包しているようで、2番グリッド発進から序盤3位を走っていた野尻(#40 DOCOMO TEAM DANDELION RACING)ら数台がピットストップ時にロスタイムを被る状況があり、決勝最高位は武藤英紀(#41 DOCOMO TEAM DANDELION RACING)の5位にとどまった。野尻がピットストップを順調に消化できていれば表彰台の可能性は充分にあったと思われるだけに残念だが、これは早晩、解決される問題だろう(野尻は決勝9位)。
全体に底上げされたホンダ勢のなかでも、マシンセッティングの面でいいところをつかんできているのがDOCOMO TEAM DANDELION RACINGということになる。特に光ったのは予選2位となったルーキー・野尻で、彼は前半戦の苦境下でも予選で健闘を見せていたが、今回の躍進は「エンジンとチームのマシンセッティング、両方によるものだと思います」と本人は分析。そして今回の速さは今後のコースでも普遍的に発揮できるものであるとの感触らしく、「これからも勝負できると思いますし、次のオートポリスはたぶんチーム的にもともと得意ですよね。さらにいけると思います」との展望を語っている。
F3時代から若手らしからぬ冷静さも持ち合わせる野尻は、中高速コーナーの多いオートポリスでの高次元コーナリングスピードに向けて、「自分が早く順応していければ(勝負できる)」と付け加えることも忘れない。そして「僕自身、やらなきゃいけない部分、直さなきゃいけない部分もあります。これまでよりもちょっとだけ器用にやれるようにしていきたいと思います」と客観的な自己評価も。一昨年のチーム部門タイトル獲得陣営で、日本レース界きっての名将・田中耕太郎エンジニアとのタッグで戦っている24歳(次戦決勝翌日に25歳)、やや遅咲きの新人の動向から目が離せない後半戦となりそうだ。
SF第5戦は大分県・オートポリスで9月13日~14日に開催される。