三井造船の100%子会社である三造パワーエレクトロニクス(三造パワーエレ)は19日、自動車産業向けに、海上コンテナ輸送に対応したコンパクトサイズの鍛造前誘導加熱装置(誘導加熱装置)を開発、販売を開始したと発表した。
この新開発の誘導加熱装置は、すでに多数の受注・納入実績がある、という。
従来、誘導加熱装置は国内の生産ラインに納入することが大半だったが、自動車産業の海外生産比率の高まりにより、装置を海外輸送するケースが増加している。同社主力製品の中容量(300~600kW)誘導加熱装置は、海上輸送用のコンテナサイズに収まらず、コンテナ船でなくばら積み船での輸送を余儀なくされていた。
今回、誘導加熱装置のサイズをコンテナ輸送に対応するサイズに小型化したことで、輸送コストを大幅に削減するだけでなく、輸送時の分割を最小限に抑えて、現地での垂直立ち上げが可能になった。
今回開発した装置は、電源装置の小型化と搬送装置高さの低減を行い、40フィート・ハイキューブコンテナに収容可能なサイズで、電源装置については、これまで主流であったサイリスタ・インバータではなく、トランジスタ・インバータタイプに変更し、さらに主回路構造もユニット化した。
これにより、従来は2300mmだった電源盤幅をコンテナ収容に適したサイズまで縮小でき、搬送装置についても構造の徹底的な見直しを行い、電源装置を組み合わせたままでコンテナ収容が可能となる高さを実現している。
更に本装置は、加熱温度や電圧などの運転データを視覚的に確認でき、装置自体・加熱動作の健全性を検証できるトレンドグラフ機能や、トラブル発生時にユーザーでの初期対応の手助けとなる、トラブルシューティング機能を装備するなど運転・保全管理に役立つ機能が標準装備されている。
誘導加熱とは、日常生活の中でクッキングヒータや炊飯器においてIH(=Induction Heating)として親しまれている高周波を利用した加熱技術。産業界においては、急速加熱、高温、クリーン・省エネなどを利点として各種加熱用途に用いられている。
三井造船は、鍛造前加熱工程向け誘導加熱の分野において、1966年以来40年余にわたりトップシェアを続けており、中でも厳しい品質管理と高い生産性を誇る我が国大手自動車メーカーにおいては圧倒的なシェアを築いている。
また、2010年には中国の上海に誘導加熱装置の製造・販売・アフターサービス拠点として「上海三造機電有限公司」を設立し、中国から自動車メーカーや自動車部品メーカーのグローバル展開をサポートする体制を築いている。