デンソーが開発中の気流誘導高着火スパークプラグを「人とくるまのテクノロジー展」に展示した。説明員の方にお話を伺ったところ、なかなか興味深い話だったので、ここで紹介したい。
スパークプラグの先端には中心電極と接地電極がある。この電極間を電気が飛ぶことにより、スパークが起こって混合気を燃焼させるのだが、最近のエンジンは排ガスや燃費性能を高めるために、燃焼室内の混合気に強いタンブル流(上下方向の渦)を起こさせている。そのため従来のエンジンでは問題にならなかった、接地電極によるタンブル流への影響が無視できなくなってきたのだ。
プラグを締めつけて、タンブル流の上流側に接地電極が来てしまうと、中心電極を覆うように流れが阻害されてしまい、着火性の低下や炎の広がりが遅くなってしまう場合があるのだとか。そのため自動車メーカーはプラグの向きが揃うようにしたいのだが、プラグメーカーとしては高性能なアフターパーツのプラグも交換用に使って欲しいことから、それは難しい。そこでデンソーが考え出したのが、周辺電極の隣に誘導板を立てるというもの。
これにより万一、上流側に接地電極が来てしまっても、誘導板によってタンブル流の一部が中心電極に流れるため、着火性を安定させることが可能になるのだ。輸入車などに多い接地電極を複数もつプラグにすればいいのでは、とも思い訊いてみると、あれは中心電極周辺の混合気の流れを悪くするので逆効果だとか。タンブル流が強くない、従来のエンジンで確実な着火を行うためのデザインだったそうだ。
昔はレーシングエンジンなどでプラグの向きを排気側に接地電極が来るように揃えていたチューナーも多かったが、やはりあれは理に適っていたのだ。可視化エンジンと高速カメラによる実証実験と、コンピュータによるシミュレーション技術により、以前は想像するしかなかったエンジンの燃焼の様子が検証できるようになった。それが昔のチューナーの凄さと、今の燃焼技術の高度ぶりを教えてくれた。