人とくるまのテクノロジー展の会場内を歩いていたら、ちょっと変わった構造物に目が留まった。まるでホームセンターで販売されているパイプと継ぎ手を組み合わせて作る棚や枠で、小さなクルマのスペースフレームを作ったように見える。近づいてみると、やはりそれはスペースフレームのサンプルのようだ。
展示していたのは東京鋲兼のブース。こちらはネジなどのファスナー関連やダイキャストやプレス製品、それらを利用する工具や自動化の機械などを手がけるメーカーだ。そのグループ企業にカーボンファイバーの成型を手がける小高精密があり、カーボン製のパイプや射出成型の部品を作っている。このスペースフレームは、そんな同社の技術を活かして開発したパーツを組み合わせて作り上げたものらしい。
個々の部品としてはクルマ用の構造材としても十分な強度や剛性を確保していると言う。ただし、現在はパイプとジョイント部の締結は差し込んであるだけで、これに新開発のタッピングスクリュー「CFタイト」を組み合わせることにより、固定する考えだとか。CFタイトは下穴を開けてねじ込むだけで、CFRPが割れることなく締結できるで、鋼板などの金属やその他の樹脂など異素材との締結にも使えるそうだ。
しかし走行中の外力をこれで受け止めると応力が集中してしまうし、CFRPの長所である引っ張り強度の高さを活かしきれない。どちらかと言えば、ボディ外板などをCFRPのパイプに固定するためにCFタイトは向いていそうだ。
構造用接着剤などを使ってしっかりとジョイント部とパイプを接合するなど、結合方法が開発されれば、小型EVのシャーシ用に、この構造材は活用できそう。そうなればシャーシまでキット化したEVの出現も夢ではない。自宅のガレージでEVのカーボンシャーシ自作を楽しむ。そんな風景も想像してしまうほど、可能性を感じさせる材料だ。