インドでシェア4割を誇るマルチ・スズキ。その販売現場を取材する機会を得た。ニューデリー市内マヤプリ地区にある「D.D.Motors」のショールームで、セールスマネージャーのアトゥール・サチさんに話を聞いた。
地元の有力ディーラー、D.D.Motors
D.D.Motorsは、ニューデリー市内に4店舗、市外にも1店舗を持つ。その中でもマヤプリショールームはワークショップとボディショップを併設する大型店舗で、年間の累計販売台数は2400台。インド国内に1200の販売拠点を構えるマルチ・スズキは年間100万台を売り上げているが、単純計算で1000台弱ということを考えると同店舗の占める割合は大きい。さらに法人販売にも力を入れており、公共機関や大企業などへの訪問販売や特別オファーを毎月定期的に行っている。大型ディーラーだからこそ可能な取り組みだと言えるだろう。
店内は、デリーモーターショー14で発表された新型車『セレリオ』の展示もあり、多くの人で賑わっていた。来客数は普段の週末よりも10人ほど多いという。
顧客の内訳は新規購入者(ファースト・タイム・バイヤー)が35~40%、25~30%が代替え、30~40%が増車。都市部ということもあって、新規の割合は他店舗と比べるとそれほど多くないようだ。ローンでの購入が全体の7割で、モデルによってレートは異なるが、金利は11~12%と日本にくらべ高い。
需要モデルの価格帯に上昇傾向
昨年は国内の販売台数が前年比9.6%減と11年ぶりに低迷を見せたインドだが、販売現場ではどのように感じているのだろうか。サチさんは「やはり我々の店舗でも販売台数は落ち込んでいる。さらにコンペティターの増加もあり、現状は厳しい」と話す。
また、近年は「市場の需要が高めの価格帯に移ってきており、100万~120万ルピー(約165万~197万円)のモデルが人気だが、そこに訴求できる車種がないので難しさを感じている」(サチさん)という。
エントリーモデルの『アルト』(25万~33万ルピー、約40万~54万円)は安定した人気を維持しているが、46万~62万ルピー(約75万~102万円)の『スイフト』や50万~76万ルピー(約82万~125万円)の『スイフト ディザイア』の販売台数が伸びており、『ワゴンR』(36万~43万ルピー、約60万~70万円)に代わって2番人気となっているのだ。
同店舗の売れ筋モデルは『SX4』。スズキが世界戦略車として投入している1.6リットルのセダンで、価格はガソリン車で81万~98万ルピー(約134万~162万円)となっている。しかし、同車の最高グレードでも価格は100万ルピーに届かないため、新たなモデルの投入を希望しているという。
『セレリオ』『SX4 クロス』…新型車への期待は
そんな中、先日デリーモーターショー14で発表された新型車『セレリオ』に対してはどう捉えているのだろうか。
サチさんは「お客さんが購入しやすい価格(39万ルピー、約65万円から)なので、販売攻勢も期待できるモデル。これを期にもっと新モデルが増えれば嬉しい」と話す。参考出展された『SX4 クロス』についても「新カテゴリーのクロスオーバーは認知されるまで時間がかかるかもしれないが、人気価格帯の穴を埋めるモデルとして販売できれば今取り逃がしている顧客層にも働きかけられる」と、投入を望んでいた。
ちなみに、成約特典として何か用意しているのかと尋ねたところ、「以前はフルーツボックスを用意していたが、賞味期限の問題があるのでチョコレートボックスに変更した」とのこと。派手なプレゼントはなく、サービスの質で顧客の心を掴んでいるようだった。