軽自動車税の引き上げが、2015年4月から始まる。軽自動車税は軽自動車全体に課税されるものだが、この増税に限って、四輪車は同月の新車登録から、二輪車は、同月以降全車例外なく課税されることになった。なぜこうした偏在が起きたのか。
四輪車だけ修正、原付・二輪車は総務省の原案通り
合意形成に関わった関係者の一人は、こう振り返る。
「決着してみると、最低課税額が導入されることは避けられない既定路線だった。その当時は税率3倍という数字に驚いて、何とかしなければという思いだったが、それよりも課税対象に気を配るべきだった」
総務省が示した軽自動車税の増税案は、もともと新車に限ったものではなかった。四輪車の増税が新車に限定されたのは、税制大綱の合意形成を得る過程で出てきた修正案。総務省関係者の弁を借りると、「我々は、どの車種も新車だけを対象にしたいと話したことはないし、提案もしなかった」ということになる。
実際、合意前に修正が反映された文書には、四輪車についてのみ修正が加えられ、原付・二輪車では、総務省の原案がそのまま残された。
国会議員が四輪車の増税対象を新車に限定するよう修正を加え、それですべてが決着したと考えた。その隙間に、巧みの潜り込ませるような話だった。
◆「ユーザーの関心も薄いから、二輪車は黙って従うだろう」
総務省の担当者は「議員も気が付かなかったし、我々も説明はしなかった」と話す。
総務省は、軽自動車増税は1.5倍と説明している。しかし、二輪車の増税は、二輪車全体では1.5倍か2倍かの二者択一。最低課税額が特に影響する排気量50cc以下の原付バイクでは、2倍か3倍かという選択肢しか用意されていなかった。
「ユーザーの関心も薄いから、二輪車は黙って従うだろう。そう思われていたのではないか」
12月12日、自民、公明両党で、二輪車も増税対象を新車にすることを検討するという覚書が交わされた。その決着を知った業界関係者は、静かにつぶやいた。
◆車検制度の有無が分かれ道に
修正を求めた税制大綱に、二輪車も新車を対象にという文言が盛り込まれなかった影響は大きい。
自民、公明両党が交わした覚書は、二輪車に対する軽自動車税の増税を新車に限定するよう今後検討する、という内容。この文言を、どう理解するかは増税をどう考えるかという立場によって大きく違う。
増税を主張する総務省では、大綱に書いてあることがすべてに優先するという考え方だ。
「大綱では二輪車の軽自動車税を引き上げると書いてある。それは大綱に書いてないことはできないということ。必要ならば措置をしなければならないが、覚書が優先するわけではない」(総務省関係者)
課税対象を新車に限定するためには、制度を変える必要がある。これも、玉虫色決着した理由のひとつだ。
一部の二輪車には車検制度があるため軽四輪車と同じように初年度登録年月が車検証でわかる。ただ、排気量250cc以下の二輪車は制度上、初年度登録がいつか知ることができない。地方公共団体を所管する総務省がこの制度を変えない限り、新車だけを課税対象とすることは不可能だ。
一方で、総務省は地方公共団体が負担する二輪車の徴税コストの負担増も理由にしている。徴税コストが一因で増税するならが、当然排気量40cc刻みで変えているナンバーも廃止、統合を検討し、コスト削減を主導していかなければならない。
2015年度の増税スタートまでに自公の覚書が実現するかどうか。それは、まさにこれからの議論だ。