【池原照雄の単眼複眼】これで終わりではない「車体過税」

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取得税下げも軽自動車の増税で補てん

消費税増税が実施される2014年度からの車体課税の変更が決まった。与党税制改正大綱では日本自動車工業会などが政府に要望していた自動車取得税の引き下げには一定の配慮があったものの、軽自動車税の増税(15年度以降の新車に適用)も盛り込まれた。

消費税が引き上げられるため、14年度からは登録車、軽自動車問わずすべての車両が増税となる。しかも車体課税の見直しはこれで終わりではなく、15年度に向けても作業が進められる。車種によっては更なる増税で「車体過税」となる可能性もある。

焦点のひとつだった取得税は、自動車業界が消費税率のアップ分と同じ3%幅の引き下げを求めていたが、自家用登録車など(現行5%)は3%に、軽自動車や営業用車(同3%)は2%に引き下げることとなった。今回の税制改正大綱では、消費税率を10%に引き上げる時点での取得税の廃止も改めて言及されている。

そうした消えゆく取得税の代替財源の布石として打たれたのが、軽自動車税の引き上げだ。15年度から新車は年7200円(自家用乗用車)が5割増しの1万800円となる。ただし、軽自動車税は購入翌年度から徴収されるので、実際の納税は16年度から始まる。

そうした“出入り”の一方で、唯一減税らしい減税といえるのが、エコカー減税対象車の「免税車」についての自動車重量税の扱いだ。14年度以降に購入する新車は、3年後の初回継続車検時の自動車重量税が、現行の5割減免から完全な免税になるという措置である。もっとも、その原資は新車登録から13年を経過した古いクルマへの増税で賄われる。

15年度は自動車税の「環境性能割」が焦点に

今後、1年をかけて論議される車体課税の見直しでは、(1)消費税率10%時の取得税廃止に伴う代替財源への動き(2)14年度で終了するエコカー減税の扱い―の2点がポイントとなる。いずれも今回の14年度大綱に、その方向性が示されている。

取得税の代替財源として政府が狙うのは、登録車のユーザーが毎年支払う「自動車税」であり、大綱では「環境性能課税(環境性能割)を、自動車税の取得時の課税として実施」する方向と言及している。現在の自動車税は、排気量別に税額が定められ、毎年納税するという方式だが、車の購入時においても、新たに燃費など環境性能に応じて課税するという考え方だ。

つまり、環境性能の良くない車については購入時の自動車税を増額し、全体として取得税の廃止による税収減をカバーしようという目論みである。この新たな自動車税の扱いについては、大綱では一年後の一五年度税制改正時に「具体的な結論」を得る方針とした。税率についても触れており、「課税標準は取得価額を基本」とし、「燃費基準値の達成度に応じて、0~3%の間で変動する仕組みとする」と指摘している。

この際の燃費基準値は、省エネ法に基づく「2020(平成32)年度燃費基準」が採用される見込み。ただ、この新たな税制については軽自動車の扱いが明瞭には示されていない。「自動車税」は登録車への税金であり、軽でそれに相当するのは「軽自動車税」だが、今回の大綱では同税への「環境性能割」課税への言及はなく、あいまいなまま。自工会もこの点は「不透明であり流動的」(業務統括部)と受け止めている。

エコカー減税は継続されるが重量税も温存される

一方、「エコカー減税」については、同年度の税制改正時に基準の見直しなどを行い、15年度以降も継続する方針が示された。エコカー減税は取得税と重量税を対象に減免措置を講じているもので、現行の制度は14年度で終了するスケジュールとなっている。今回の大綱では、エコカー減税について1年後までに見直し作業を行い、「エコカー減税制度の基本構造を恒久化する」との方針が明記された。

やがては取得税が廃止されるため、重量税のみが減税制度の対象となる。自動車業界やユーザー団体は、すでに課税根拠を失った重量税の廃止を訴え続けている。しかし、財政当局は、エコカー減税の継続という一見すると「アメ」を与えて、実は重量税の存続を図る戦術だ。エコカー減税などよりも、重量税を全廃した方が、ユーザー負担ははるかに改善される。

《池原照雄》

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