【トヨタ ハイエース 改良新型】商用車デザインは街の景色を変える…チーフデザイナー青木保氏

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【トヨタ ハイエース 改良新型】商用車デザインは街の景色を変える…チーフデザイナー青木保氏
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2004年のデビューから10年目を迎えた現行200系『ハイエース』がマイナーチェンジした。今回は、現行ハイエースの開発時からチーフデザイナーとして携わった青木保氏に、そのデザインコンセプトや今回行われたマイナーチェンジの狙いについて話を聞いた。

スターウォーズのストームトルーパーに得たデザインの強弱

----:青木さんは(2004年に発売された)現行ハイエースのチーフデザイナーを担当されたとのこと。いわば生みの親ですね。

青木氏(以下敬称略):当時、外形のまとめをやりました。私の場合はハイエースや『ランドクルーザー』など、ワンボックスやSUVを中心に担当しています。

----:ハイエースと同じように、ランクルも目的のはっきりしたクルマです。

青木:目的に対するデザインとしての回答が、力強さだったり、走破性だったりで、それらを形にして見せるところは、ある意味ハイエースに通じる部分だと思います。ただ、先代ハイエースに比べて、現行の200系は正面から見た時が四角いですし、ワイドボディが加わるなどバリエーションも増えたので、かなり苦労しました。(外観デザインの)絵は、そんなに揉めずに決まったんですが、それを具現化するにあたって、まず一番小さいナローと一番大きいワイドのスーパーロングを仮に作り、それぞれにヘッドランプ、フェンダー、Aピラー、リアコンビ、ライセンスガーニッシュといった共通パーツを入れて、うまく成立するか、つながるかを見るわけです。

一番危惧したのは、四角くなったことで、シルエットがトラックに似てしまうことです。でもハイエースはそれではいけない。やはりどこかに演出がないと、ただの箱になってしまうので、造形できるところは少しでも質感を出したい。私は丸みが変化するところに質感が出ると考えているので、例えばサイドはほとんど平面なのですが、よく見ると前半部分は微妙に「3」の字になってますし、スライドレールの辺りから後ろは少し絞っています。寸法のない中、ギリギリのところでデザインしています。

----:Bピラー周辺も特徴的です。

青木:最近は例外もありますが、トヨタのワンボックスはBピラーが外板出しになっています。ハイエースの場合は初代からずっと外板出し。やはりBピラーを中心にスタイルを作っていきたい、というこだわりはありますね。

それから当時思ったのは、黒の材着(材料着色)バンパーでカッコよくしたい、ということでした。(最上級グレードの)「スーパーGL」ではなく、(主力グレードの)「デラックス」でカッコよくしたいと。ですから、当時イメージしたのは「スターウォーズ」に出てくるストームトルーパー、あの白い兵隊さんです。あれって(ボディアーマーの部分が)白ですけど、黒い関節のところが黒で締まって見えるからカッコいい。だから白いボディカラーで、黒い材着があってカッコいいデザインにしようと。それを実現するため、細かいところまで徹底的にこだわってデザインしました。

初代のバンらしさ、力強さに立ち返る

----:今回のマイナーチェンジでは、フロントフェイスが大きく変わリました。

青木:(2004年に出た)最初のモデルでは、まずバンらしい顔を作りましょうということでした。2010年のマイナーチェンジは、私は担当していないのですが、スーパーGLのユーザーを意識してヘッドライトのデザインを変えるなど少し乗用車寄りに振りました。

そして今回は、発売から10年近く経って、街にもたくさんハイエースが走っているので、今までとはちょっと違う顔にしたいと。気持ちとしては初代に立ち返る感じで、バンとしてのたたずまいや力強さといったハイエースらしさを残しながら、新しいテーマを入れるというのが狙いです。

例えば、今回はランプ、グリル、バンパー開口の横線基調は残しながら、上と下の開口を大きく囲って、遠目にも明らかに違って見える顔を表現しました。それからバンパーも以前は立体的で、冷却用の開口部が多かったのですが、今回は(以前行われたディーゼルエンジンの改良に伴い)サブラジエーターも無いので、もっとシンプルにしようと。また、ハイエースらしさに、トヨタの「アンダープライオリティ」と呼ばれる、下にしっかり構えのある表現も融合させています。

----:エアロスタビライジングフィンが付いた新しいリアコンビランプも、青木さんらが中心となりデザインされたと。

青木:最初に条件をもらった時は、フィンの高さがかなりありまして、これだとちょっと全幅を飛び出してしまうなぁと(笑)。そこでフィンではなく、凹形状のものもデザインしたのですが、最終的には高さを抑えて、本数で(効果を)稼ぐ方向で対応しました。

また、リアのライセンスガーニッシュも、今回はシンプルにして面を伸ばし、ボディパネルと一体感のあるものにしました。

素でいいものを提供したい

----:今回はインテリアも大きく変わりました。ダッシュボード表面のほか、ステアリング、メーター、空調操作パネルの意匠も変わりました。

青木:インパネはグローブボックス以外、全部変わっています。最初のモデルは道具感を重視して幾何学シボでしたが、今回は革シボです。加飾パネルも、スーパーGL系を重視して少し華やかにしています。以前は工具のようなデザインを目指していたのですが、最近は工具でもずいぶんオシャレですからね。

このあたりは営業の方々と個々のパーツのコストについて「これいくら?」「これいくら?」と聞いて、値段の付いた紙芝居みたいなものを作って、「これだけ(質感が)良くなるならいいでしょう」と納得してもらいながら、いいものにしました。今回のハイエースはエクステリアを含めて、いい形でバージョンアップ出来ていると思っています。

----:ハイエースはカスタムの世界でも非常に盛り上がっています。

青木:本当にありがたいことに、いろいろな本や雑誌で取り上げられていて、びっくりしています。ですので、それを意識していないと言えばウソになりますが、我々としては、メーカーがやるからには形だけじゃなく、ベースとして素(す)でいいものを提案したいと思っています。面白いのは、最近ハイエースのミーティングやカスタム本を見ると、意外にノーマル風のカスタムが多いことですね。純正風というか、まとまりを重視する方が増えているなぁと。ですから我々としても、素でいいものを提供していかないと、カスタムもしてもらえないと考えています。

街の景色を変える商用車に

----:1967年に登場したハイエースは、もうすぐ50周年になります。今後ハイエースのデザインはどうなっていくのでしょうか。

青木:200系をデザインした時に思ったのは、洗練された商用車がたくさん街を走ることで、結果として街の景色が変われば、ということでした。そしてたくさん走るクルマだからこそ、しっかりデザインしたいと考えていました。そういう意味で言うと、お陰さまで200系ハイエースを見かけることが本当に多くなり、やはりこれからもいいものを作っていきたいと感じています。

この先、ハイエースがどうなるか、私が担当するかどうかも分かりません。ただ私は根っこが商用車好きですから、これからも街の景色を変えるような商用車が存在し続けて欲しいと思っています。

《丹羽圭@DAYS》

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