【ハイエース開発主査に聞く】ハイエースらしい乗り味の復活とハンドリング性能を追求

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『ハイエース』開発主査の包原氏は言う。「ダッシュボードのデザイン変更と同時に、今回はステアリングの形状も見直しました。リムの太さを2mm太くして、断面形状も変更しています。これまではちょっとステアリング操作が重めでリムが細かったことから、操舵感のバランスが悪いと感じていたので、しっかりと握れる形状にしたことでバランスを整えたのです。それとスーパーGLに関しては今回、足回りも変えました」。

これはその背景を補足せねばなるまい。100系までのハイエースワゴンは、リヤサスペンションにコイルスプリングを採用し、バンとは異なる走りの安定感や乗り心地を実現してきた。しかし200系ではワゴンはワイドボディとなり、従来の5ナンバーワゴン的役割は4ナンバーのスーパーGLとなった。

5ナンバーのワゴンが廃止されたのは、『アルファード』『ヴェルファイア』がLサイズミニバンとして用意されたこともあり、上質なワゴンを望むユーザーはそちらに流れるという見込みがあったからだ。ところがハイエースの人気も根強く、スーパーGLを乗用車的感覚で愛用するユーザーも多いことから、包原氏としてはやはり上質な乗り心地と安定感高いハンドリングを実現する必要性を感じたのである。

ステアリングを切った時の動きと、操舵フィールはバランスさせるべき

包原氏(以下敬称略):ハイエースは操安性を語るようなクルマではないという意見もありますが、やはりステアリングを切った時のクルマの動きと、操舵フィールはバランスさせるべき、というのが私の考えです。従来の設計ではサスペンションに縮み側のストロークがあと5mm残っていたので、バネとダンパーを換えると共にそのストロークを生かして、もっとしっとりした乗り味にしながら、ハンドリングも追求しました。操安担当は、かつて一緒にレクサス『CT』の開発をやった人間なのですが、非常に喜んで仕事をしてくれました。

マイチェンで可能な足回りのリセッティングとは

足回りのセッティングを見直す。こう書けば事は簡単だが、クルマの操安を見直すのは、そんな簡単な作業ではない。ましてやハイエース・スーパーGLの足回りはフロント・トーションバー/リヤ・リーフという構成。コイルスプリングと比べてバネの特性などに制約が大きいだけに、細やかなチューニングには向いている構造とは言えない。

さらにはバンだけに規定重量の積載物によって車重が上下するという制約もある。それでも包原氏は足回りのリセッティングを断行したのだ。だが、基本デザインを変えず、マイナーチェンジでどこまで乗り味を変えることができたのだろうか。

包原:乗ればすぐに分かります。ステアリングを切り込んだ時にスッとノーズが入っていく感触や横風安定性なども良くなりました。元々がそれほどレベルが高いクルマではないのですが、乗り比べると「ずいぶん違うね」という評価ができるようになりました。従来モデルは、クルマの上下振動に起因して頭が前後に揺すられるのです。これをできる限り解消できるようなセッティングにしました。

新設計のアルミホイールはギリギリで修正、担当者とのせめぎ合いも

驚いたことに、その乗り味に仕上げるための最後の切り札として、アルミホイールさえも新設計させたと、包原氏は言う。

包原:アルミホイールの重量と剛性が走りを変えることは、これまでの経験上分かっていましたから、今回のハイエースでもデザインを変えました。これまでの逞しい印象から、シャープなイメージにして、ホイールの肉厚も変えています。このタイヤホイールによるチューニングは最後の最後で行なったので、ホイール設計の担当者には「このタイミングで変更するんですか!?」と言われました。「設定がダメだから」と答えたのですが、私としては「あったり前だろ!」と思っていました。

こうして新しいスーパーGLは見た目、快適性、そして走りが洗練されたのだった。それは従来モデルのスーパーGLオーナーたちなら思わず嫉妬しそうなほどの内容だ。

それにしても、トヨタの開発陣の中でも取り分け包原氏の妥協を許さない、走りへの追求の姿勢は、どこから来るものなのか。そこには、これまでのクルマづくりで築かれたものと、やはりハイエースに対する想いが存在したのである。

《高根英幸》

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