【メルセデスベンツ ウニモグ 同乗】最大登坂能力45度の実力…高根英幸

試乗記 輸入車
ウニモグU4000シリーズ
  • ウニモグU4000シリーズ
  • 特徴的な門型アクスルとリダクションハブによって最低地上高は420ミリを誇る
  • 様々なスイッチ類が並ぶインパネ
  • AMTのシフトレバー
  • シフトレバーを挟んで右に二人が座れる3人乗りのレイアウト

あの『ウニモグ』に試乗することができた。学生時代、漫画『エリア88』で知って以来、憧れていたメルセデス・ベンツの多目的作業車である。

本来、PTOを使って豊富なアタッチメントを駆使することで林業では山中で木材の切り出しと運搬に、そして酪農では牧草を刈り取って集めたりと、様々な用途に使えるクルマであるが、何といっても我々の心を惹き付けるのは、その走破性だ。

前後リジッドサスペンションの4WDとローギアードな変速機により驚異的な登坂能力を誇るだけでなく、ハブにも減速機構を与えてデフを小型化してすると同時にデフのホーシングをハブから上にオフセットさせることで、圧倒的なグランドクリアランスを確保して抜群の悪路走破性を実現しているのだ。

日本においてウニモグは、鉄道のレール(軌道)のメンテナンスに使われる軌陸車や高速道路のトンネル掃除などに使われるものが知られている。今回試乗できることになったのは、それらの日本で長く活躍しているウニモグではない。東日本大震災の当時、ダイムラーグループが復興支援として200万ユーロの義援金と一緒に三菱ふそうから30台、ダイムラーから20台の車両を贈呈してくれた、その内の1台だ。

ダイムラーが提供したのは、どれも悪路走破性の高いトラック&クロカン4WDだった。当時、ロシア機でドイツから緊急空輸した20台のうちの3台が、役目を終えて三菱ふそうの下に残され、我々に試乗の機会を与えてくれた、という訳なのである。場所は栃木県にある三菱ふそう喜連川研究所内のテストコースだ。

今回試乗させてもらったのは高機動型と呼ばれる、走破性を重視したU4000シリーズで、荷台はフラットなベッドの四隅に鋼鉄の柱を立てて倒木などをガンガン詰める仕様となっている。

今回は運転することは叶わなかったが、助手席でもその個性的な走りは十分に感じ取ることができた。エンジンは4気筒のディーゼルでダッシュボード下部が張り出すほどキャビンとエンジンは密着しているから、エンジン音は容赦なく聞こえてくる。これは、こうしたワイルドな乗り物だと思えば自然に思えるレベルの騒がしさだ。

このウニモグのトランスミッションはAMTなので、走行中は自動的にシフトしてくれるほか、スイッチでシフトアップ&ダウンを自在に行なえる。そのシフトアップはAMTらしいゆったりした動きでスムーズだが、減速時のシフトダウンはダイレクト感が高く、停止時には何段もダウンしていくのでシフトショックは大きめ。全体的にローギアードで駆動抵抗も大きいため、エンジンブレーキが大きく効くのだろう。

ウニモグには通常の走行モードの他に、作業用に高い油圧を取り出すためのワーキングモードが副変速機として備わっている。通常の走行モードでも十分にローギアードだが、ワーキングモードに切り替えて走行してもらうと時速2~3kmでしか進まず、エンジン回転を上昇させてもほとんど加速しないほどの超ローギアードぶり。後で調べてみるとワーキングモードは走行用の6分の1という減速比で、最高速度はわずか14.9km/hであった。

テストコースには10%の勾配をもつ登坂路があったが、最大登坂能力45度を誇るウニモグにとっては、何の障害にもならない。軽々と登り切り坂を駆け降りる時に、ある感覚に気が付いた。想像以上に乗り心地がいいのである。これだけの大径タイヤを装着してホイールベースが短いことからピッチングが大きくても当然なのに、路面の微妙な凹凸もスムーズに吸収してくれるのだ。これなら長時間の移動も意外と快適かも知れない。ウニモグの長い歴史に培われたノウハウは、こんなところでも感じさせられたのだった。

《高根英幸》

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