サブオービタル商業宇宙旅行 現在の進捗と新たなユーザーの可能性

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パネルディスカッション登壇者 右からNPO法人有人ロケット研究会 箱田雅彦副理事長、JAXA宇宙科学研究所 阪本成一教授、クラブツーリズム株式会社 浅川恵司宇宙旅行部長
  • パネルディスカッション登壇者 右からNPO法人有人ロケット研究会 箱田雅彦副理事長、JAXA宇宙科学研究所 阪本成一教授、クラブツーリズム株式会社 浅川恵司宇宙旅行部長
  • パネルディスカッション登壇者 右からJAXA航空本部 田口秀之氏。株式会社スペースシフト 金本成生代表取締役
  • パネルディスカッション登壇者 スペースフロンティアファウンデーション 宇宙ビジネスコンサルタント大貫美鈴氏
  • ヴァージン・ギャラクティックによる商業サブオービタル宇宙旅行、今後の課題。クラブツーリズム 浅川部長のプレゼンテーションによる
鳥取県米子市で2013年10月9日から11日まで開催された第57回宇宙科学技術連合講演会にて「有人サブオービタル宇宙旅行」をテーマとした有識者によるパネルディスカッションが開催され、米国の状況を中心に商業宇宙旅行の進捗状況が報告された。

「今年こそは」と期待されるものの、現状ではまだ商業運航は開始されていないサブオービタル(弾道飛行)商業宇宙旅行。先陣を切った試験機『スペースシップ1』がテスト飛行を行ってから、来年2014年で10周年となる。ヴァージン・ギャラクティック社の日本での代理店となるクラブツーリズム 浅川恵司宇宙旅行部長は、実際に商業運航を行う『スペースシップ2』の進捗状況を報告した。

浅川氏の報告では、スペースシップ2は今年3月末にロケットエンジンに点火してテスト飛行を行った。6月には連邦航空局 FAAに対し商業運航の申請を提出。発着場となる『スペースポート・アメリカ』が位置するアリゾナ州では、リスクを伴う商業サービス実施の法的裏付けとなるインフォームド・コンセント関連の法整備も成立し、商業運航に向けた準備は整いつつある。ヴァージン・ギャラクティック社は定期的にフライト予約者向けのイベントを開催しており、リチャード・ブランソン会長は「毎年のように『来年こそは』と述べて申し訳ないが」とコメントしたという。ただし、実際の商業フライト時期については2014年以降であるとしている。また、新規の予約者についてはフライト料金は25万ドルを予定しており、当初の20万ドルから値上げしている。

サブオービタル宇宙旅行のユーザーは、これまで新規なサービスに関心の高い富裕層が想定されていた。日本からの予約者全員と面談したことがあるという浅川氏も「宇宙へ行ってみたいという純粋な好奇心」を持つ人々とコメントしている。しかし、こうした層が繰り返しサブオービタル宇宙旅行を利用し、リピーターとなるかについては不透明な部分があった。そんな中で、別の視点からリピート利用が考えられるユーザーについてJAXA宇宙科学研究所 阪本成一教授から期待の表明があった。サイエンス利用ユーザーだ。

現在、JAXAでは高度100km強、宇宙の入り口付近の科学的観測を行う観測ロケットを年に数回打ち上げている。S-310など観測ロケットの中でもそれほど到達高度が高くない部類や、先日、到達高度の記録を更新した高層気球については、サブオービタル宇宙飛行で観測ミッションのかなりの部分が置き換え可能だという。サブオービタル機であれば観測ロケットよりもはるかにコスト低減が見込まれ、同一対象の繰り返し観測も可能になる。ロケットの場合は観測機器が使い捨てとなってしまい、送信できるデータ量も無線で送受信できる範囲にとどまるが、サブオービタル器で観測機器ごと回収できるのであれば、もっと大容量のデータ収集が可能だ。また、実験担当者が「ペイロードスペシャリスト」としてサブオービタル機に同乗することで実際に宇宙を体験する教育機会が得られる効果も期待される。スペースシャトルでは1986年のチャレンジャー事故後に終了してしまった「Teacher in Space」プログラムの実現、普及ともいえるという。

海外宇宙ビジネス動向をよく知るスペースフロンティアファウンデーションの大貫美鈴氏によれば、サブオービタル機のサイエンス利用は注目される分野となっており、機体の内側で微小重力環境を提供するサービスだけでなく、機体の外側に機器を搭載して、宇宙環境に曝されるタイプのサービスも検討されているという。当初は「物好きしか利用しないのでは」といった視線を受けていたサブオービタル宇宙旅行だが、商用飛行に向けた進捗が明らかになってきたことで、周辺のビジネスが広がってきたと考えられる。
《秋山 文野》

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