乗用車の搭載バッテリー構成比が変動している。バッテリー大手のジーエス・ユアサバッテリーによると、国内保有台数におけるアイドリングストップ(IS)車の構成比が2014年度は5%程度のところ、2015年度には10%程度に拡大する見込みだ。
あわせて、充電制御車のシェアも拡大傾向が続き、従来車用バッテリーの市場は年々減少していくとみられる。
低燃費化を実現するIS車において、バッテリーは重要な役割を果たす。エンジンのオンとオフを頻繁に切り替えるIS車は、短い間隔での放電と充電が必要とされ、従来車とは性能の異なる専用のバッテリーが搭載されている。電池工業会では、IS車に対して専用のバッテリー規格、形式表示を規定している。従来規格のバッテリーでは、IS車に対応できず、バッテリートラブルの原因となってしまうからだ。
そうしたなか、ジーエス・ユアサバッテリーが手がける新製品は、従来車とIS車の垣根を越える。
『エコR ロングライフ』は、従来車とIS車の両方に対応する。従来車に搭載すると、寿命性能は36か月または10万kmを保証。IS車では、18か月または3万kmを保証する。これはバッテリーの心臓部である内部エレメントに「ULL(ウルトラ・ロングライフ)構造」を採用したことなどで実現した。セル構成や格子デザインの最適化、ハードペースの採用で極板構造も強化されている。
カーボン量の最適化や電解液にリチウムを配合したことで、充電回復性能を向上、IS車に適合させている。極板の劣化を抑制することで長寿命化にもつなげた。
長寿命が売りとなっているが、従来車・IS車に両対応していることで流通面でも優位性を生んだ。同社では、エコR ロングライフの“定番在庫化”を促すとしているが、これは従来車、IS車と別々のバッテリーを必要としないため、流通の簡素化、負担減を意味する。
従来車とIS車に対応する新製品は、ユーザーには長寿命と安心感、バッテリー選びの簡素化を、また販売店には在庫負担軽減というメリットを提供する。
車両のパワートレインは、低燃費化競争に合わせて複雑・多様化が進む。クルマが使う電力を陰で支えるバッテリーは、HV・PHV・EVの登場で、次第に存在感を高めている。ジーエス・ユアサが投入したIS車・従来車の“両用バッテリー”は、補修用バッテリーの流通と製品ラインアップのあり方を変える、業界のマイルストーンとなり得る可能性を秘めている。