【日野 安全技術説明会】電子制御システムを駆使…横転を防止するVSC、高速バスに必須のPCS

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日野安全技術説明会
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今やほとんどの新型乗用車に搭載されている「VSC」(横滑り防止装置)も、トラックへの普及が進んでいる。

しかもトラックの場合リヤが流れてスピンしてしまうことや、低μ路でフロントが流れてしまうアンダーステアを抑えてくれるだけでなく、横転事故に対しても有効なのだ。

この日はコンクリート製の積載物を搭載した小型トラックで、VSCの有り無しによる走行安定性の違いを見せてもらった。VSCをオフにした状態での旋回は、前後輪とも内輪が大きく浮き上がり、外側のアウトリガーで支えられなければ完全に横転していた。それに対し、VSCをオンにした状態では、ロールをきっかけにリヤタイヤこそ浮き上がったものの、その高さは格段に少なく、内輪が浮いていた距離も半分ほどになった。これほどまでに姿勢を制御する効果があるとは、少々驚かされた。

そして、いよいよメインメニューのPCSである。大型商用車の場合、乗用車ほど制動力も高まらず、なおかつバスでは乗客の安全も考えると極端な急制動は別の危険性も高まってくる。そのため商用車用のPCSは、乗用車用と比べて早い段階から正確な検知が求められる。しかもバスやトラックは乗客や積載物の多少によって、制動性能も大きく影響を受けるため、PCSの制御も非常に難しいそうだ。

それでも日野自動車のPCSは2006年、商用車では世界で初めて商品化されており、現在は第二世代へと進化を遂げている。警報や衝突時の自動停止など基本的な部分は変わらないものの、自動停止後も制動力を維持して後続車による玉突き衝突を防止すると共にハザードランプとストップランプを点滅させ、後続車に危険を知らせる機能が追加されているのである。また対向車検知機能により正面衝突事故時の被害軽減も高められている。これはミリ波レーダーによって前方車との相対速度を検知するPCSの機能を拡大させて対応させたのだろう。

実際にトラックとバスで、コース上に乗用車と同じ反射を示すダミーブロックを目標物にデモンストレーションを行なってもらった。PCSの作動のみでは衝突後、すなわちブロックを通過後にハザード点滅で停止するのに対し、警報に気付いてドライバーがブレーキをかけた場合はブロックの手前で停止することが出来た。

PCS搭載車が道路上に増えることは実際に交通事故の被害軽減につながるだけでなく、これまで以上にバスを安心して利用できるようになるし、対向車や後続車に大型トラックを見つけても緊張することは減るかもしれない。それだけでもこの安全装置を搭載する意味は大きい。

この他、車両ふらつき警報や車線逸脱警報、いねむりを検知するドライバーモニター付きPCSなどドライバーに注意を促し、安全性を高める装備も盛り込まれている。

乗用車はパーソナルな乗り物だけにドライバーや乗員の安全を重視している装備が目立つが、大型商用車は公共性の高い乗り物であるからだろう、周囲の交通に配慮する安全装備をより多く感じる。そんなことに改めて気付かされた安全技術説明会であった。

《高根英幸》

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