日産『スカイラインクーペ』のデザインはいかにもスポーティクーペのイメージだが、ボディサイズの大きさがスポーティさをスポイルしている側面もある。インテリアはタイト感のあるコクピット空間が作られていて、運転席に座ると、さあ運転しようという気持ちにさせられる。
アメリカ向けに作られたスカイラインクーペは、ボディがけっこう大きい。古くからのスカイラインを知っている者としては、この大きさではスカイラインらしくないと思うが、これも時代の流れである。
ボディサイズは大きいものの、運転感覚はドライバーとクルマの間に一体感が得られるものだ。アクセルを踏めば前に進み、ステアリングを切れば向きを変えるといったごく当たり前の動きが、文字通りドライバーの思いのままに実現される。
このダイレクト感というか、クルマを操っていることの実感は、とても気持ちの良いものとして感じられた。今どきこんな気分にさせてくれるクルマはそうあるものではない。
搭載されるV型6気筒3.7リッターのVQ37VHR型エンジンは245kW/363N・mのパワー&トルクを発生する。しかもVVEL機構を採用することなどによってスムーズかつパワフルに吹き上がっていく。7500回転から始まるレッドゾーンの手前まで一気に吹き上がるとともに、回転の上昇に合わせて力強いパワーを感じさせる。
前後異サイズの19インチタイヤを履く足回りはやや硬めの乗り味で、これもまた走りの実感につながるものでもある。
足回りの動きもシャープな切れ味がある。ハンドルをすっと切ると、クルマがぱっと曲がるような反応の良さがあり、しかも4WAS(4輪操だ機構)の効果によってレーンチェンジの安定性も高い。とても気持ち良く走れるクルマである。
今はスポーティな走りよりも環境に配慮した走りが求められる時代である。でも、スカイラインクーペの走りは、クルマが本来的に持つ楽しさを具現化している。こうしたクルマにだって一定以上の存在意義がある。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。