【中田徹の沸騰アジア】混沌のカンボジア自動車市場、プノンペンは カムリ博物館?

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カンボジア プノンペンの街並み
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2013年の3月末にカンボジアの首都を訪れた。街を歩く。トヨタ『カムリ』が圧倒的に多い。『ハリアー』『ランドクルーザー』も目立つ。ASEANには、1トンピックアップが人気の国があり、多目的車の人気が高い国があり、セダン/ハッチバック中心の成熟市場があるが、カンボジアの自動車市場はこれらの国とは明らかに異質だ。

「アジアの真珠」の経済発展は低速

かつて「東洋のパリ」と賞され、「アジアの真珠」とも謳われるプノンペン。この街の東側を流れるトンレサップ川は、街の南東部でメコン川と合流する。この川沿いの街並みには今もフランス植民地時代の面影が色濃く残り、付近にはレストランやカフェ、バー、土産物店、旅行代理店が軒を連ねる。

夕闇が暗さを増すなかで、ヨーロッパやオーストラリア、アメリカから来た観光客たちで賑わっている。

川沿いの華やかな地区から離れると、プノンペン市民の生活感が一気に押し寄せてくる。目抜き通りを除けば街灯は少なく、暗い印象を受ける。ここから600km離れたタイの首都と比べて何年くらい経済発展が遅れているのだろう、と考える。

1980年代後半まで内戦が20年間続いたカンボジア。ポル・ポトが率いたクメールルージュ(政党)によって、知識層を含む多く人々が虐殺された。国の再建を担うべき知識層を失ったことも、この国の経済発展が遅々としている理由のひとつだ。

カムリの歴史博物館

プノンペンの1人当たりGDPは1500~2000ドルに達していると言われる。庶民の足は二輪車で、プノンペンに限って言えば普及率はかなり高いとの見方もある。

四輪ユーザーの多くは、海外からの不動産投資などの波に乗り資産を増やした層だ。モータリゼーション到来前だが、プノンペン市内の交通量はそれなりに多く、渋滞も発生する。

二輪車の場合、ホンダが新車市場でシェア約85%を握る。2012年の新車市場は約23万台で、このうち20万台がホンダ車だ。特に現地プノンペンの工場で組み立てられている『ドリーム125』の人気が高い。シェア2位はスズキ。中古車では韓国ブランドが売れているようだ。中国車の影は薄い。

四輪車市場(左ハンドル車)の規模は年間3万台と言われ、これには新車販売(推定3000台)、輸入中古車、名義変更などが含まれる。SUVと1トンピックアップの人気が高い新車市場では、シェアトップのトヨタを、日産やいすゞ、フォード、ヒュンダイなどが追いかける構図になっている。一方、輸入中古車については、車両価格の安さを背景に需要の大部分を吸収している。しかし、取引や流通の実態はグレーで、全体像の把握は難しいとされる。信頼性に足る統計は存在しない。

往来を眺めていると、カムリの多さが際立つ。仮に、路上を走るクルマの半分がカムリだ、と言われても、容易に信じてしまう。そして様々な世代のカムリが混在している。1980年代後半と思われるものから2000年代に生産されたものまである。カムリの歴史博物館といった状態だ。カムリに次いで、ハリアーやランドクルーザーの人気も高い。『プリウス』をみかけることもある。ブランド志向が強いと言われるカンボジア人に人気が高いこれらの車種はリセールバリュー(再販価格)が下がりにくく、道路を寡占している。

事故車市場と言われるカンボジア

輸入中古車の多くは、事故車だと言われる。事故車が売れている理由は言うまでもなく安いためだ。プノンペンを走るクルマのどれくらいが事故車なのだろうか。廃車・スクラップから再組立された車両も存在する。プノンペン市内では輸入スクラップのマーケット(入札)が定期的に開かれている、と聞いて驚く。廃車・スクラップから走行可能な自動車をどうやって組み立てるのか想像を巡らす。プリウスのようなハイブリッド車をメンテナンスできる修理工場のエンジニアがいるのだろうか。

そして、いつになったら新車が売れる時代になるのだろうか、とも思った。

《中田徹》

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