日本に導入されるフォーカスのエンジンは自然吸気であるが、トランスミッションのおかげか走った印象は軽快で、新しい感覚の乗り物に乗っている印象がある。
パワーユニットは、2リットルの4気筒直噴エンジンとツインクラッチ式の6速トランスミッションの組み合わせ。排気量が2リットルとトルクに余裕があるためか、スタートからトン、トン、トンと、気持ちよくシフトアップしてくれ、アクセルを深く踏み込まなくても、周囲の流れに合わせて加速することが出来る。
燃費性能はどうだろうか。東京都内の一般道を走行した平均燃費計の印象でいうと、普通に走って10~11km/リットル、エコランを頑張って12km/リットルぐらいが限界か。信号のために減速する際、瞬間燃費計を観察すると、おおよそ40km/h以下の領域ではアクセルをOFFにしても完全な燃料カットがされていないのが気になった。
ただ、60~90km/hの速度域で連続走行する、高速道路等の領域だけを切り出すと、平坦路が多ければ20km/リットル越えも期待できそうな雰囲気。現実的には、流れの良い郊外の道路や高速道路を使う機会が多い人であれば、14km/リットル程度の燃費を得られるだろう。
気になったのは小回り性能。最小回転半径が6メートルであることに加え、「コーナーセンサーくらい装着してるでしょ?」とカタログを見直したが設定がない。狭い場所での取り回しが苦手な筆者は、小さなコインパーキングに止めることをすっぱりと諦めた。
先進性はどうか。時速30km以下で作動する自動的ブレーキが用意されるが、レーダーやカメラを使ったAAC(アクティブ・クルーズ・コントロール)は付かない。ただ、クルーズコントロールの操作スイッチは使いやすく、渋滞のない高速道路ではあったが、スイッチ操作だけで速度をコントロールして静岡~東京間を走行することができるほど。
全体的な印象は「なんとなくチープなんだけどいいクルマ」。長距離を移動した時の気分はとても気持ち良く、“キリキリ”と人間を神経質にさせるクルマではないことは確か、細かいことは帳消しにしてくれる。価格や装備、燃費など経済性といった面でライバル車と比較すると厳しい部分はあるが、おおらかな気持ちにさせてくれる一台。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
椿山和雄|フリージャーナリスト
1977年生まれ・埼玉県在住。『レスポンス』編集部員としての長年のキャリアを活かし、現在はフリーランスのライターとして活躍。流行ものに興味がいってしまうミーハーで、ドライビングテクニックの上達を目指して『グランツーリスモ』で腕を磨く。エコランにかけてはプロを凌ぐ結果を残すことも。