僕の投票基準はこうだ。
10年後に振り返った時に,その時代を思い起こせるほどの存在かどうか、である。イヤーカーとは、もっともっと華やかな存在であると考えている。たとえ、いわゆる「いいクルマ」だとしても、時代を揺るがすようなパワーが備わってなければ響かない。逆に、どんなにクルマとしての欠点を抱えていても、時代を象徴していれば認める。機械として整っているかどうかは二の次だ。パワーの大小が決め手となる。
たとえば日本レコード大賞が、歌唱力だけで判断されるのならば、SMAPも氷川きよしも受賞は難しい。音程だけがすべてならば、声楽家が連続受賞となるだろう。
ただ、それでは寂しい。その時代を活気づかせ、盛り上げ、パワーを振りまいたかどうかが評価基準としているのだ。
だから今年は、トヨタ『86』/スバル『BRZ』に満点を捧げた。86、クルマとして首を傾げたくなる部分は多い。心の底からいいクルマだとは思えない。だけど、話題の中心になったのは事実だろう。スポーツカー受難の時代の強烈なカンフル剤にはなったはずだし、その心意気には動かされたのだ。
10年後に振り返った時に…。おそらく86/BRZのことを思い出すだろう。
木下隆之|レーシングドライバー/文筆業
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1960年5月5日、東京生まれ。コラムやエッセイの連載多数。基本的に乗り物大好き。好奇心旺盛。作詞にも挑戦中。レース番組コメンテーター。ドイツ・ニュルブルクリンクでレーシングスクールを主宰。講演会多数。神戸テクニカルカレッジの非常勤講師を勤めるなど多彩に溢れる。レース歴は25年。大学生時代に全関東学生選手権王者。日産契約ドライバー時代にはF3、全日本ツーリングカー選手権、全日本GT選手権で優勝多数。ニュルブルクリンク24時間レースには91年から参戦開始し、最多出場記録更新中。スーパー耐久では、過去に5度のチャンピオンを獲得。2007年には全8戦すべて優勝という完全制覇を達成。自ら最多勝利数記録更新中だ。