【池原照雄の単眼複眼】大きく変動した上期の国内シェア

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ホンダ N BOX
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総需要は34%増で大震災前に復元

2012年度上期(4~9月)の国内新車需要は、エコカー補助金や新たなエコカー減税により、前年同期を33.5%上回る259万台となった。2年ぶりのプラスであり東日本大震災前の10年度(254万台)の水準に戻した。市場が復元するなかで各社の競争は激化し、とくに上位5社のシェア順位は大きく変動した。

上期の大幅増は、補助金などの市場活性化効果だけでなく、前年同期が大震災による生産減で大幅に落ち込んでいた反動もある。259万台となった上期の内訳は、登録車が29.2%増の約161万台、軽自動車は41.4%増の約98万台だった。

登録車を大幅に上回る伸びとなった軽自動車は、年度上期としては過去最高を記録している。総需要に占める軽比率は11年度上期の35.7%から37.8%へと2.1ポイント拡大し、これも最高になった。軽市場の拡大は、何といっても11年12月に発売されたホンダの『N BOX』シリーズの貢献が大きい。

また、この1年間でダイハツ工業の『ミライース』やスズキの新型『ワゴンR』のように、それぞれのジャンルで燃費性能を大幅に改善した新モデルの登場も、軽のウェートをもう一段高める原動力になっている。

N BOX効果のホンダは一気に2位に浮上

販売業界団体のデータをもとに算出した12年度上期の上位5社のシェア(%)と順位は、次のようになった(カッコ内は前年同期)。
1(1) トヨタ 30.1(26.7)
2(5) ホンダ 14.0(11.8)
3(2) スズキ  13.1(13.3)
4(4) ダイハツ 13.0(12.7)
5(3) 日 産 11.0(13.2)

トップのトヨタ自動車は、前年同期に大幅な減産を強いられたこともあって、12年度上期の販売台数は1.5倍強に拡大した。車名別ランキングでは『プリウス』と『アクア』のハイブリッド車(HV)が1、2位を独占。昨年9月に市場参入した軽も、純増での貢献となった。総市場でのシェアは3割だが、登録車のシェアは48.3%となり、過去最高だった10年度上期(47.6%)を2年ぶりに上回った。

ホンダは、上期の軽市場でベストセラーとなったN BOX効果で前年の5位から一気に2位に浮上した。総販売台数は、1.6倍に増加した。軽自動車が2.9倍に拡大したことが寄与しているものの、登録車も『フィット』や『フリード』などのHVが好調で18%の伸びを確保している。

商品力がよりシビアに問われる下期

軽大手2社ではスズキが2位から3位に順位を下げたが、ミラシリーズが軽で2位につけたダイハツは前年と同じ4位に踏みとどまっている。もっとも、両社の販売台数はいずれも3割以上の伸びとなっており、主力の軽市場の成長を逃すことなく取り込んでいる。

日産は、前年を12%上回る販売を確保したものの、市場の伸びには追いつけずシェアは3位から5位に後退した。同社の国内営業を担当する片桐隆夫副社長は「悔しい思いをしているが、(新商品の投入計画から)上期の実績は想定の範囲」と話す。

日産は今年度、日本市場に新モデル5車種を投入する計画であり、その中核として9月に発売した『ノート』は、同月の登録車ランクでいきなり3位となった。最大のライバルと目しているホンダのフィットを抑えており、受注も高水準を維持していることから、巻き返しの期待が高まる。

上期の国内市場は、エコカー補助金が終了した9月に、小幅ながら1年ぶりのマイナスとなった。下期も、前年の10月以降が大震災からの復興によって大幅増となったため、今年はマイナス続きが予想される。市場環境が厳しくなるなか、各社の商品力がシビアに販売シェアに反映される展開となる。

《池原照雄》

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