21番手から快進撃の佐藤琢磨、ラストラップにまさかのクラッシュ。最終戦のウィナーはエド・カーペンター、2012シリーズタイトルはライアン・ハンターレイ。
米西海岸時9月15日(土)、カリフォルニア州フォンタナにあるオートクラブ・スピードウェイで2012インディカーシリーズ最終戦が行われた。
最終戦までもつれこんだシリーズチャンプ争いは、トップのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)を17ポイント差でライアン・ハンターレイ(アンドレッティ・モータースポーツ)が追う展開。ポイント3位のエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)にもまだ充分にチャンスがある状況で決勝レースを迎えた。
前日に行われた予選で最速ラップを計測しポールポジションを獲得したのはマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・モータースポーツ)。しかし250周・500マイルのロングランレースだけに、メンテナンスのタイミングもあって全26エントリーの約半数となる14台のマシンが10のグリッドダウンと引き換えに新エンジンへの変更を行った為、スターティンググリッドは予選終了後にアジャストされ、予選3位だったパワーは13番手、17位だったハンターレイは22番手から、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン)も予選16位ながら後方の21番グリッドから決勝レースのスタートを切ることとなった。
レースは今シーズンの最後を飾るに相応しい白熱の展開となった。コース上で綴られた数々の大波乱のドラマの幕開けは、55周に発生したパワーの単独クラッシュだった。マシンは大破してしまった。パワーが序盤、26台中25位でのリタイアとなれば、ハンターレイのシリーズタイトル獲得は濃厚になったと多くの人が考えたはずだ。しかしチーム・ペンスキーはあきらめていなかった。ガレージに引き上げられ応急手当を施された12号車は、大きく周回遅れとなりながらも再びコースに復帰。超高速レースに加わることは叶わなかったが、メカニカルトラブルによりすでにリタイアしていた1台の周回数を超えるラップを走行しポジションをアップし、ハンターレイに「5位以内でのフィニッシュでなければ」のプレッシャーを与えた。
佐藤も最終戦を盛り上げた立役者の一人だ。スタートから持ち味でもある積極的なドライビングで21番手から大躍進。 周回毎に続々と先行のマシンを抜き去り序盤38周目にトップに立つと、その後も終始先頭集団にあって熾烈なバトルを繰り広げファンを魅了した。しかし最終盤、コンタクトが連続する荒れ模様となったレースで、最後の最後にウォールの餌食となったのも佐藤だった。それまでは着々とポジションアップを果たしていた佐藤だが、 日没を迎え気温が降下とともにレーススピードが上がる中、ラスト9周でのアクシデントによる赤旗中断からのリスタートでは数台のマシンに先行を許してしまった。そして最終周のターン2で突然リアを滑らせウォールにヒット。このアクシデントによりイエローフラッグとともにチェッカードフラッグが振られた。
最終戦はエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)の勝利で幕を閉じ、4位となったライアン・ハンターレイがシリーズタイトルを獲得。 佐藤は7位となり、シリーズ14位でシーズンを終えた。
佐藤琢磨コメント:
最初のプラクティスで時間が十分にとることができず、クルマづくりは後手後手に回ってしまいましたが、走行中に得た有用なデータや感触をもとに大きくクルマを換えて今日のレースに挑みました。
気温が高い中でのスタビリティは持っていたので、スタートから思い切って攻め、順位を上げてゆくことができました。懸念していた日没後に路面温度が下がってからのクルマの動きも、レース中に調整を重ねてコンディションにうまく合わせることができたと思います。路面グリップが上がっていろんなラインが取れるようになり、ペースも上がってきましたが、最終盤はトップスピードの伸びしろが残っていない感じになってしまいました。また最後の2つのリスタートでは、ボルチモア戦と同じようなにエンジンの息つきが始まり(今原因を調べていますが)順位を大きく下げてしまいました。
そしてファイナルラップの1−2コーナーを入る時、ハンターレイが上にいて僕が真下に並んで走行していたのですが、ふたりともラインをコーナーエイペックスに向けて落ちていくところで僕のクルマが急にふらつき、スピンしてしまいました。
今シーズンは悔しい、惜しいレースがあった1年でした。同時に非常にコンペティティブに走れるレースもあり、何度もレースをリードし、何度もトップや表彰台を狙えるチャンスが有ったことは収穫だったと思います。今日も予選後には苦しい戦いになると思っていたのですが、終盤までは非常に良いレースが出来ました。これも来年につなげるために非常に良い経験になったと思っています。