ノート、ミラージュが台風の目に
国内新車市場で、コンパクトカーの戦いがさらに熱を帯びようとしている。ガソリンエンジン車ながら燃費性能を高めた新モデルが8月下旬から相次いで登場、一部のハイブリッド車(HV)とも拮抗する燃費で、既存ガソリンエンジン車陣営が失地回復に動く。8月中にはエコカー補助金の予算が消化される見込みとなっているものの、コンパクト分野の激戦が、マーケットの反動減を和らげることになろう。
コンパクト市場の台風の目は二つある。日産自動車の新型『ノート』(排気量1.2リットル)と、三菱自動車工業がタイ工場で生産して日本に投入する『ミラージュ』(1リットル)だ。発売は、それぞれ9月初めと8月末を計画している。
ノートは現行1.5リットルからのダウンサイジングで、2タイプあるエンジンのうち、スーパーチャージャーを採用した新開発型は、25.2km/リットル(JC08モード、以下同)の燃費を実現した。1.3リットルのSKYACTIVエンジンにより25.0 km/リットルと、HVを除く登録乗用車では現在、最高燃費のマツダ『デミオ』をわずかに上回る。
10年で5割改善されたコンパクト2BOXの燃費
一方、日本では12年ぶりの復活となるミラージュは、小ぶりの車体サイズによる軽量化や新開発の3気筒エンジン、アイドリングストップ装置などにより、27.2km/リットルまで伸ばしている。ガソリンエンジンによる登録乗用車では、デミオの登場以来、1年2か月ぶりの最高燃費更新となり、後に続く新型ノートもリードする。
これは、コンパクト市場で圧倒的な強さを誇るホンダ『フィット』のHV版の燃費(26.4 km/リットル)をも上回っている。2BOXコンパクトの燃費は、10年ほど前には当時の10・15モードで20km/リットル前後が最高燃費だったものの、デミオや今回登場する2モデルは10・15モードに置き換えると30 km/リットル以上だ。つまり、この10年で燃費性能は、ほぼ5割改善されたことになる。
登録乗用車で3割を占める重要セグメント
いずれも、熱効率の向上やポンピンググロスおよびフリクションの軽減といったエンジンの改良が寄与している。加えて、CVT(無段変速機)の高効率化、アイドリングストップ装置の搭載、高張力鋼板の多用などによる軽量化、さらに空力特性の改善といった燃費向上ソリューションの定番メニューを積み上げることで飛躍的な性能アップにつなげているのだ。
燃費だけでクルマの価値は決まるものではないが、1973年の第1次石油ショックを機に世界への躍進の足がかりとなった日本車のお家芸ともいうべき低燃費技術は、ほぼ40年を経ても輝きを失っていない。
今年1~6月の国内の登録乗用車市場では2BOXコンパクト(除くミニバン系)のジャンルが3割強を占めた。根強い人気があるミニバンと双壁を成しており、「もっとも重要かつ競争の激しいセグメント」(日産のアンディ・パーマー副社長)である。秋口から、市場争奪戦は一段と熱を帯び、エコカー補助金の終了による息切れに対し、自動車業界は自助努力というカンフル剤を打ち込んでいく。