クーペを思わせるスタイリッシュな4ドア車であるメルセデスベンツ『CLS』が2代目モデルに進化した。外観デザインは従来のモデルを発展させたもので、筋肉質でシャープなキャラクターラインが際立つ印象だ。
ただ、初代CLSがデビューしたときの衝撃的な印象に比べると、今回の2代目がインパクト不足になるのは止むを得ない。初代のときには見たともないデザインだったが、今回は見たことのあるデザインであるからだ。もちろんLEDヘッドライトなどを採用した2代目も相当にスタイリッシュなクルマであるのは間違いない。
パッケージングは大きな変更は受けていないが、前席・後席とも乗降性が良くなるなど、確実に改善が図られている。肥満体型の私でも無理なく乗り降りできた。乗り込んでしまえば運転席はゆったりしたサイズのシートが包み込んでくれる。ホールド性、座り心地とも満足できる。後席も二人で乗る(乗車定員は4名)には十分な広さがある。
直噴のリーンバーン仕様に変更されたV型6気筒3.5リットルエンジンは動力性能を向上させる一方で、ECOスタートストップ機能もあって燃費も大幅に改善している。さらにATが7Gトロニックへと進化してドライバビリティは格段に良くなった。
Dレンジのままでも十分に気持ち良く走れるし、パドルシフトを操作して積極的に走りを楽しんでも良い。試乗車にはAMGスポーツパッケージが装着されていたので、Mモードを選ぶとより素早い変速が可能になる。
AMGスポーツパッケージにはAIRマテックサスペンションも標準装備となり、前後異サイズの19インチタイヤを履くにもかかわらず極めて快適な乗り心地を味わわせてくれた。
「CLS63AMG」は、名前こそ63のままだがV型8気筒5.5リットルのツインターボ仕様エンジンに変更されている。スタートストップ機構の採用などもあって、動力性能と燃費の向上は幅こちらのほうが大きい。というか、燃費などはこれまでが悪すぎたともいえる。
試乗車にはAMGパフォーマンスパッケージが装着されていて、410kW(557ps)に達する動力性能は暴力的ともいえるほど。MTのスポーティさとATの快適性を兼ね備えたAMGスピードシフトMCTはダイレクト感のある変速を見せるが、変速の滑らかさという点では通常の7GトロニックATに及ばない。
CLSは2グレードの設定で、ベースのCLS350でも930万円の価格。試乗車はAMGスポーツパッケージの装着などによって1044万円ほどになっていた。さすがにこの価格帯だと初代モデルのデビュー当初のような売れ行きにはならないだろう。
■5つ星評価
パッケージング:★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。