フィアット・グループ・オートモービルズ・ジャパンが3月24日に投入した新エコカー、フィアット『500/500Cツインエア』。排気量わずか875ccというコンパクトな2気筒ターボエンジンを搭載するこのモデルをテストドライブする機会を得た。
2気筒エンジンは、バイクでは一般的なレイアウトだが、四輪車では事実上ミニマムスペック。軽自動車でさえ2気筒エンジンは振動・騒音が大きくスムーズさに欠けるとして昭和時代にほぼ消滅。今日のモデルは3気筒以上を搭載している。フィアットが最新鋭のダウンサイジング・エコパワーユニットとして今日に蘇らせた2気筒ツインエアエンジンの仕上がりは――。
まずはパワー感だが、車両重量1010kgというコンパクトなボディを十分以上に素早く走らせるという印象だった。エンジンのパフォーマンスは最高出力85馬力、最大トルク14.8kgmと、1.3~1.5リットル級エンジンと同等。変速機のギア比はコンパクトカーとしてはややハイギアードで、ターボ過給による大トルクでグイグイ走らせるようなイメージだ。
燃費をさらに向上させるためのプログラムであるエコノミーモードに切り替えると、最高出力77馬力、最大トルク10.2kgmへとパフォーマンスが低下する。が、低回転でのドライブが主体のタウンスピードでは、パワーダウンはあまり感じられない。エコノミーモードに入れっぱなしでも不満はほとんど感じられないだろう。
面白いのはアクセルオフ時のエンジンブレーキ。2気筒化でエンジン内部の機械摩擦損失が非常に少ないためか、アクセルを抜いてもエンジンブレーキがディーゼルエンジン車並みに弱く、クラッチを切って空走しているのに近いフィーリングだった。その状態でもエンジンブレーキによって燃料カットが行われ、減速時には燃料消費量はほぼゼロ。信号の変化や交通の流れを見越した上手なドライブを心がければ、かなりの好燃費をマークすることができそうだ。
一方、2気筒化のデメリットもある。エンジンの爆発間隔は4気筒の半分で、振動特性は4気筒エンジンには明確に劣る。が、昔の2気筒エンジンとは比べ物にならないほどにスムーズなのも事実で、アイドリングや発進時の振動、騒音は、今日の小排気量クリーンディーゼルと同等。欧州モードでは『プリウス』と同等の燃費特性を持っていることを考えれば、小さな犠牲と言っていいだろう。