【iEXPO2010】エネルギー関連技術の進化を見る…NEC

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環境・エネルギー事業開発室 マネージャー 福村将史氏 環境・エネルギー事業開発室 マネージャー 福村将史氏
  • 環境・エネルギー事業開発室 マネージャー 福村将史氏 環境・エネルギー事業開発室 マネージャー 福村将史氏
  • 「利用者にとっても利便性の高いインフラにしていくには、ICTによる総合的な“情報”と“エネルギー”の制御が必要です」 「利用者にとっても利便性の高いインフラにしていくには、ICTによる総合的な“情報”と“エネルギー”の制御が必要です」
  • NECはC&CクラウドとICTを用いてエネルギーを見える化し、その情報を活用して最適に制御することで新しいエネルギー社会の実現に貢献していく NECはC&CクラウドとICTを用いてエネルギーを見える化し、その情報を活用して最適に制御することで新しいエネルギー社会の実現に貢献していく
  • 「日産リーフ」では、NECが日産自動車と共同開発したリチウムイオン電池が採用 「日産リーフ」では、NECが日産自動車と共同開発したリチウムイオン電池が採用
  • ITプラットフォームソリューション事業部 環境・エネルギーソリューショングループ マネージャー 平野伸二氏 ITプラットフォームソリューション事業部 環境・エネルギーソリューショングループ マネージャー 平野伸二氏
  • NECフィールディング 事業企画本部 サービス開発部 グループマネージャー 福田雄児氏 NECフィールディング 事業企画本部 サービス開発部 グループマネージャー 福田雄児氏
  • 毎日パソコン起動時に表示されるメイン画面。前日の電力使用状況に応じて、3段階のメッセージが表示される 毎日パソコン起動時に表示されるメイン画面。前日の電力使用状況に応じて、3段階のメッセージが表示される
  • 前日のパソコンの利用状況を時間帯別にふりかえり、ムダを発見する画面 前日のパソコンの利用状況を時間帯別にふりかえり、ムダを発見する画面

 日本電気(以下、NEC)が開催するプライベートイベント「C&Cユーザーフォーラム & iEXPO2010」(以下、iEXPO)で紹介されるクラウドを活用した様々な取り組みの中には、環境・エネルギーをテーマとしたサービス、ソリューション、製品も多数展示される。

■電気自動車(EV)インフラ・HEMS・BEMSを初めとするエネルギー事業の取り組み

 NECのエネルギー事業として最もホットな話題と言えば、今年12月に発売される日産の電気自動車(EV)「日産リーフ」に、NECが日産自動車と共同開発したリチウムイオン電池が採用されることだろう。今回のiEXPOでは、EVの普及に欠かせないインフラ展示が大きな見どころだ。EVは、家庭用の電力でフル充電(80%程度)するには数時間かかる点や、ガソリン車と比べて航続距離が短い点などの課題があるが、これらを解決するには、全国規模での社会インフラの整備がカギとなる。その中心となるのが、急速充電や電子決済、ネットワークの機能を備えた「スマート充電ステーション」だ。

 NEC 環境・エネルギー事業開発室 マネージャーの福村将史氏は、「EVはエネルギー効率の点でガソリン車よりも優れていて、それを支える充電ステーションは設備が比較的簡単であり、環境に対する取り組みの1つとしても注目されていますから、ドライブインやコンビニ、スーパー、各種の公共施設など様々な場所に設置されるでしょう。そして、多様な事業者が提供する各充電ステーションを、電力を安定的に供給し、利用者にとっても利便性の高いインフラにしていくには、ICTによる総合的な“情報”と“エネルギー”の制御が必要です」と語る。それをNECのICT(C&Cクラウド)で実現すべく、NECはエネルギー事業にも軸足を置いていこうとしている。

 いつどこで誰がどう充電したか、どの充電器が空いているか、といった情報があれば最寄りの充電ステーションを見つけたり、いつも利用している充電ステーションの待ち時間を確認するといったことも可能になる。また、電子マネーなどのPOS機能が急速充電器にあれば決済もスムーズになるし、付加価値サービスを提供することも可能になる。こうした膨大な情報の効果的かつセキュアな処理は、ICTベンダーの得意とするところだ。福村氏も、「発電所の設備管理におけるシステムはすでに事業化していますが、NECには蓄電池や充電器などのエネルギーコンポーネント技術もあり、この点が他のICT企業にないNECの強みです。この強みを生かしてエネルギー分野で新しい事業を起こしていきたい」と語る。

 今の日本の電力事業は、電力会社10社が上から下まで統制しているが、これからは新しいエネルギー関連サービス事業者が多数生まれることが予想される。例えば、充電利用のデータを集めてエネルギー事業者に配信したり、大きな蓄電池を所有して余った電気を買い取り、電気代の高いタイミングで売るといった事業者や、ビルのバックアップ用発電システムをデータセンターのように一カ所に収容して、オンデマンドで顧客に提供する事業所など。こうした事業者にとっても、ICTによる総合的な制御は大きな魅力だ。

 iEXPOの展示会場には「日産リーフ」も登場するEVインフラの他、太陽光発電やリチウムイオン蓄電システム、電力消費量の見える化を取り入れたHEMS(ホームエネルギーマジメントシステム)や改正省エネ法対応のBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)におけるNECの取り組みが紹介される。このうち、HEMSに関しては、住宅メーカーとの提携を発表した住宅内におけるエネルギー使用量の見える化システムを、「C&Cクラウドを利用したHEMS」として展示する。福村氏は「家庭の分電盤の近くに電力量を測定する機器を設置し、インターネット経由でクラウドに接続することにより、利用者は自宅のパソコンから使用する電力使用量や料金、Co2の削減量を確認できます。 新築だけでなく既築住宅にも取り付けが可能であり、価格は住宅設備メーカーと比べても低く抑えられているため、今後、幅広い普及が予想されます」と説明する。これらからのエネルギー関連事業の展開に興味のある方は要チェックだ。

■「エネパルシリーズ」でオフィス全体の消費電力を見える化し、省エネをナビゲート

 改正省エネ法や東京都環境確保条例の施行により、CO2排出量削減が急務となってる企業に現在注目されているのが、今年5月に発売となった省エネオフィスサービス「エネパル PC」だ。エネパル PCは2007年、国内の温室効果ガス排出量削減目標の設定や、ビルや店舗など民生業務部門のCO2排出量が急増している中、環境省より「地球温暖化対策技術開発事業」支援を受けて開発したソフトウェアをもとに事業化したものだ。

 エネパル PCの特長は大きく3つある。

 第一に、PC1台ずつの消費電力とCO2排出量を日別・月別で「見える化」できる。使い方の傾向やムダ時間(キーボードやマウスが動いていないにもかかわらず電源が入っている状態等)をグラフで客観的に把握できる。また、前日の利用が削減目標を達成していなければ「もう少しです!」「もっと節電を!」といったメッセージやアイコン、グラフを出す等、利用者の意識改革を図り、省エネ行動を促進させるしかけも搭載している。

 第二は、利用者の過去の電力消費パターンから将来予測を行い、定例会議や定期的な外出、昼食時を“ムダ時間”と判断して自動的に電源を落とす「自律制御」機能だ。OS(Windows)の電源設定よりも早いタイミング(ただし使い勝手は落とさない)で節電モードを作動するこの電源制御は、ソフトウェア化する以前の2004~2006年に、国立環境研究所、東京大学先端技術研究所とNECが共同開発した「最適電源制御アルゴリズム」によって実現している。

 NECの平野伸二氏(ITプラットフォームソリューション事業部 環境・エネルギーソリューショングループ マネージャー)は、「OSの節電機能は半ば強制的で、利用者の使い方をあまり見ていません。環境省様と最初に仕様を検討した際も、仕事の邪魔をしたり、一律で厳しく制御するのではなく、省エネと使いやすさのバランスをとる仕組みが欲しい、というお話をいただきました。見える化するソフトウェアは他社からもいろいろ出ていますが、エネパル PCのような自律制御を行うソフトウェアはないと思います」と、その特長を語る。

 第三は、「一元管理」だ。管理者は全PCまたはグループ単位で消費電力およびCO2排出量の実績や推移を把握できる。また、こうした情報がクラウド型で提供されるため、管理サーバを用意する必要がない。

 エネパル PCは、モニタリングしたいPC1台ずつにインストールするエージェント・ソフトウェアと、管理者のPCにインストールする管理アプリケーション・ソフトウェア、サポートサービス(年間契約)をセットにした「エネパル PCパック」として提供されている。

 すでに、千代田区役所や滋賀県庁等の自治体で実証実験を行っており、「自分が使っているPCの削減状況やランキングが毎日表示されるので、自分の問題として捉えることができます。また、従業員同士で順位の話で盛り上がるなどして、省エネ意識が次第にオフィス全体に浸透していくといった効果もあるようです」と、平野氏は導入効果について語る。さらに、省エネ法第1種指定工場でかつ東京都環境確保条例の指定事業場にもなっているNEC府中事業場では、PC約8,000台を対象とし、約22.4%の削減率を達成したという。

 このエネパル PCのデータベースを有効活用し、消費電力およびCO2排出量の見える化をオフィス(フロア)全体に機能拡張したソフトウェアが、来年度中にリリース予定の「エネパル Office(仮称)」(参考出展)だ。

 オフィスのエネルギー消費のうち、約6割は空調設備、約2割が照明、残り2割がコンセント(IT機器等)と言われる。NECフィールディングの福田雄児氏(事業企画本部 サービス開発部 グループマネージャー)が「環境省の支援を得てエネパル PCを開発していた段階で、将来はオフィス全体の可視化を目指すと宣言していました」と開発経緯について語る。

 オフィスの消費電力には、人がいなくて使われていない時間帯、人が増えていく出社時間帯、消灯によって少し減る昼食時間帯、人が減っていく帰宅時間帯といったような傾向があるが、意外と把握されていないという。エネパル Officeは、オフィスの空調、照明、IT、コンセント等の消費電力と、温度・湿度・照度・人感といった各種環境センサーを組み合わせ、ロケーション別や系統別に可視化することで、環境担当者に省エネ対策の“気付き”を与える。そして将来的にはエネパル PC同様、電力消費の自律制御機能を搭載していくという。

 会場では、エネパル PCを実際に使えるほか、エネパル Officeの管理画面のプロトタイプを見ることができる。また、エネパル PCのエージェントソフトを1カ月無料で試せる「エネパル PC体験版(CD-ROM版)」の無料配布も行われる。自分のPCが今どれくらいの消費電力なのか、自律制御でどれくらいの削減効果があるか、実際に確認できるチャンスだ。

【iEXPO2010(Vol.8)】エネルギー事業の技術はここまで進んでいる!

《RBB TODAY@RBBTODAY》

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