「1954年に発表された『300SL』は20世紀最高のスポーツカーという称号をもらいました。そして、21世紀の最初の10年が終わろうとしている現在、この新たな時代に、新たなアイコンを名乗れる、新たな車が『SLS AMG』なのです」
メルセデス・ベンツ日本社長のニコラス・スピークス氏はそう、新型車を位置づける。デザインは、300SLのアイコンであるガルウイングドアと、ロングノーズ&ショートデッキのプロポーションを現代流に解釈し、存在感を醸し出している。
では300SLは、ガルウイングドアをなぜ採用したのか。300SLではボディ剛性を上げ、軽量化する目的でフレームに鋼管スペースフレームを採用した。そのフレーム設計ではサイドシルが高くなった。横開きドアでは乗り降りが不自由となり、ドアの取り付けも困難なことから、ガルウイングドアが採用された。ステアリングコラムが根元から折れることでも、乗り降りをしやすくしている。
つまり300SLでは、スタイリングとしてガルウイングドアが採用されたのではなく、機能的な必要に迫られてのことだったのだ。