エコカーだけをエコひいき……した訳ではなかった。が、今年のイヤーカーにはトヨタ『プリウス』を推し、次いでホンダ『インサイト』を評価することにした。
プリウスについては、今さら多くの説明を必要としないほどだろう。何といっても、初代以来の量産ハイブリッドシステムに磨きをかけ、燃費、動力性能、ドライバビリティなど、実力がさらに高められた。
“姿カタチ”がよくなった点も、ボクとしてはおおいに評価した。先代のコンセプチュアルなスタイルは、いかにもエコカーらしいプレーンさだったが、3代目は一転、情感が感じられる。とくにウエッジを強め、抑揚のある断面形状のボディサイドは精悍でさえある。個人的にはテールランプ回りに先代との変化感がほしかった……など注文はあるが、積極的に乗りたいと思わせてくれる姿に進化したと感じた。
ついでにいえば、インテリアも前席左右を分断するセンターコンソール部のデザインにも、やや違和感が残る。インテリアが『SAI』なら言うことなしといったところ。が、クルマぜんたいの完成度は高く、ソツなく、イヤーカーとしての資質は十分と判断した。
インサイトも意欲的な価格設定、プリウスに勝るとも劣らない市場での評価などは認められた。が、実用車として考えると乗り心地、ドライバビリティが少し物足りない。ルーフが低く乗降性にやや難ありの後席も、プリウスに一歩譲る。むしろ、東京モーターショーにも登場した、近く登場する予定の『CR-Z』のスマートでスポーティなエコカーぶりが気になるところだ。
個人的な配点の詳細は割愛するが、輸入車ではボクはアルファロメオの『MiTo』を支持する配点とした。何といっても「DNAスイッチ」を切り替えることで活きのいい走りが実現されているのは、理屈抜きで楽しい。またスタイルも実に表情に溢れたもので、試乗車を借り受けていた期間中、庭に停めているのを眺めているだけでも心弾んだ。停めた自分のクルマを振り返って眺めたくなる……そういう価値観も大事だと思う。
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年より『GOLD CARトップ・ニューカー速報』の取材/執筆を皮切りにフリーランスとして活動を開始。以来『アクティブビークル』『オートルート』など自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。興味の対象はデザイン、カーAVを始め、クルマ周辺の生活スタイル、モノなども。1970年代以降に趣味で収集を始めたカタログ(クルマ、オーディオ、カメラなど)の山をどう整理していくかが、目下の課題のひとつ。