ホンダは、研究開発子会社のホンダ・リサーチ・インスティチュート・USA(HRI-US)が米国のパデュー大学、ルイビル大学との共同研究により、金属型カーボンナノチューブの高純度合成に成功したと発表した。
今回の成果は「カーボンナノチューブ構造の体系的な制御が可能である」とした最初の研究報告として、10月2日発行の米国『サイエンス』誌に掲載された。
カーボンナノチューブは、炭素原子がハニカム状に結合したシートを丸めた、ヒトの毛髪の10万分の1ほどの細さのチューブ状の物質で、触媒ナノ粒子の表面で成長する。炭素原子シートの巻き方によって金属型や半導体型の性質を示すものが生成されるが、金属型カーボンナノチューブは、銅より高い導電性、鉄より格段に優れた強度、ダイヤモンド並みの熱伝導性を持つ一方で、綿毛のように軽い。従来の合成手法では、この金属型カーボンナノチューブが占める割合は25 - 50%程度であったが、今回91%まで高めることに成功した。
この金属型カーボンナノチューブの高純度合成は、導電性を決めるチューブの構造が触媒ナノ粒子の大きさだけでなく、形状や結晶構造に大きく依存していることを発見し、その制御方法を確立したことによって成し遂げられたとしている。
今回の研究によって高い導電性を持つ金属型カーボンナノチューブの応用の幅が広がり、コンピューター集積回路やエレクトロニクス部品を始め、バッテリー、スーパーキャパシタなどのエネルギー貯蔵材料、太陽電池、燃料電池、送電線、自動車や飛行機用複合材料など、様々な分野で高性能化、高効率化、小型化への新たな可能性が期待される。