富士重工業が5月20日に発売した主力ミドルクラスモデル、新型スバル『レガシィ』。旧型からの変化は、レガシィ始まって以来の大規模なものだ。
エンジンが大幅改良を受け、さらにエンジンの搭載方法が全面刷新された。変速機は従来の4速ATの代替として新設計のCVT(無段変速機)「リニアトロニック」を新設。ボディも新設計で、『インプレッサ』に続き、長年継承してきたサッシュレスドアを廃止。後サスペンションもマルチリンクからダブルウィッシュボーンへと変更された。
ハイブリッド、アイドリングストップ、クリーンディーゼルなど、今が旬というキャッチとなる技術がないため、『プリウス』vs『インサイト』戦争に話題を持って行かれてしまっている感があるが、実はかなり力の入ったモデルである。
10・15モード燃費は最良の2.5リットルモデル「2.5i」で14km/リットル。これはトヨタ『カムリ』、ホンダ『アコード』といった国産の2.5リットル級ミディアムハイモデルの中でも傑出した数値だ。
例えばの話だが、欧州の技術トレンドを汲み、1.4リットル水平対向4気筒直噴エンジン+ターボ、CVT、アイドリングストップを組み合わせれば、16 - 17km/リットル程度に引き上げることは難しくなかったであろう。スバル車を購入するユーザーは技術に対する関心が高い傾向があるため、ハイブリッドがなくとも、その種の先進性をアピールできるような技術が投入されていれば、もっと存在感を示せすことができたであろうことは容易に想像できる。実に惜しいところである。
開発責任者の日月(たちもり)丈志氏は、「次世代の技術導入の検討も常にやってはいるんです。ただ、直噴ストイキ(ストイキオメトリ:理論空燃費)ターボは(オクタン価が92RONしかない)日本では、ハイオク仕様にせざるを得ない。ベーシックエンジンがハイオクというのはやはり抵抗感がある。ただ、内容は言えませんが、今後はいろいろな仕掛けをしていくことを考えていますよ」と、小排気量の直噴ターボを導入しなかった理由を語る。
アイキャッチのある環境技術の導入は、2011 - 12年頃と予想されるクリーンディーゼルやハイブリッドを待つことになりそうだ。クリーンディーゼルの排ガス浄化システム、ハイブリッドの基幹システムともトヨタから技術供給を受けることができる見通しで、非現実的なプランではない。将来に期待したいところだ。