スターティングプライスが205万円からという新型トヨタ『プリウス』。最低価格の「L」グレードはドライビングポジションを決めるためのシートリフターが装備されていないのが痛いが、標準の座面高で体にしっくりフィットする人は、Lグレードで十分という充実装備だ。
とりわけ充実しているのは安全装備関連。トヨタが全モデル標準装備化を宣言していたサイドエアバッグ、カーテンレールエアバッグは、プリウスの格安グレードにもしっかりと与えられている。
濡れた路面や急カーブでクルマが危険な状態に陥りにくくするためのステアリング協調車両安定制御システム「S-VSC」、昨年『クラウン』に初採用された急ブレーキ時にブレーキランプが点滅して後続車に伝える緊急ブレーキシグナルなども装備される。とくに後者は、欧州では追突防止に効果ありということで当たり前の存在になりつつある便利なデバイスで、なかなかうれしい装備だ。
上位グレードも「S」が220万円、「G」が245万円。最高価格の「Gツーリング・レザーセレクション」は327万円だが、全般的に価格は低い。1.8リットルエンジンがメインのセダン『プレミオ/アリオン』、『カローラ・ラグゼール』、ハッチバックの『オーリス』などは、装備を考慮すると価格が逆転気味ですらあるため、モデルミックス(ラインナップのバランス)が混沌としそうだ。
そのことをトヨタは十分承知しているようで、「同じクラスの他のクルマを買うくらいだったら、プリウスを買ったほうがいいと思います。もちろん安いクラスばかりではなく、比較的価格帯が高い上級グレードもレクサスやクラウンからの乗り換えも含め、本当に多様なお客様に乗っていただいています」(トヨタ第2乗用車センター主幹・栗山剛一郎氏)
未曾有の自動車不況のなか、プリウスの低価格戦略という大胆な策に打って出たトヨタ。単なるインサイト潰しではなく、ファミリー層からプレミアム層まで、クラスレスバリューを有しているプリウスブランドで勝負に打って出ているといった印象だ。