何かと明るさに欠ける話題の多かったデトロイトモーターショーで、ひとり華やかなステージを披露したジャガーブース。そこで発表されたのは、最高510psを発する5リットルスーパーチャージャー付きエンジンを搭載した新しい『XKR』と『XFR』だ。
そんな両車に積まれた新しい心臓の詳細を取材すべく、デトロイトを後にした自分は大西洋を横断してイギリスへと飛んだ。
ジャガー開発の中枢であるホィットリー・エンジニアリング・センターで開催されたプロダクツ・ブリーフィングで明らかになったのは、この新エンジンが「100%ジャガーの手によるオールニュー・ユニットである」という事。
フォードモーターと袂を分かちあったジャガーがそこまで“腹をくくった”開発を行うとは、失礼ながら期待と予想を超えた出来事だ。
12年ぶりのフルチェンジとなるV8ユニットは、XF/XKの「R」モデルに積まれるスーパーチャージャー付きと自然吸気の2タイプ。両ユニットの基本構造は同一で、実際85%のパーツを共有するという。6孔式インジェクターから最大150barでガソリンが噴射されるボッシュ製のスプレーガイデッド直噴システムは、「業界初のセンターマウント設計」が特徴。
過給器にターボではなくメカニカルチャージャーを用いたのは、「レイアウト上、ターボでは4WD化が難しいから」との事。すなわち、現状未発表ではあるがこの心臓は、この先ランドローバー車(『レンジローバー』?)にも展開されるに違いない。
高効率で静粛性にも優れる4ベーン式ルーツ・タイプのスーパーチャージャーは、ここ最近ではキャデラック『CTS-V』やアウディ『A6』などにも採用例の見られる米国イートン社製の最新タイプ。
一方、そんな過給器を持たない自然吸気ユニットには、ホンダ「VTEC」ばりの可変バルブリフト機構や可変長吸気マニフォールドが採用される。
その他にも紹介しきれないほどの特徴を備える新エンジン搭載車は、早い市場ではこの3月からデリバリーを開始。何とも試乗が楽しみな新世代ジャガーの登場だ。