日産の高級車ブランドである「インフィニティ」が10月より、ヨーロッパで販売を開始した。プレミアムブランドがひしめくヨーロッパ市場で、インフィニティはどのようなブランディング戦略で挑むのか。インフィニティ事業本部マーケティング・セールスオペレーション部部長のEric L. Sipe氏に話を聞いた。
----:このタイミングでインフィニティブランドを欧州へ展開する狙いは。
Sipe氏:インフィニティは89年にアメリカで初めてスタートして以来、90年代半ばには中東マーケットに進出、05年には韓国、06年にはロシア、07年に中国と拡大してきた。そして今年(08年)にはヨーロッパ進出を果たすことができた。
インフィニティの戦略にはふたつの軸がある。それは販売地域の拡大とプロダクトレンジの拡大である。世界戦略としてはこの2つをバランス良く伸ばしていくのが好ましいので、車種ラインナップの拡大に加えて、北米マーケットに依存している販売を、よりワールドワイドに展開していくことがわれわれの狙いだ。販売網が整う2010年には、インフィニティブランドの世界販売台数の20-25%程度をロシアを含むヨーロッパが担うことを目標としている。
----:欧州はプレミアムブランドが数多くひしめく難しい市場という認識はないか。
Sipe氏:たしかに、ここヨーロッパでは自動車の黎明期からプレミアムセグメントが存在しており、激戦区であることには変わりはない。したがって、ブランドイメージを構築して“インフィニティ”の名前を定着させていくことをまず考える。先ほど世界販売の2割と申し上げたが、当面は台数よりもブランディングを重視していく。安売りなどは一切しない。また、アメリカに比べてもプレミアムブランドの層が高い位置にあるのが欧州の特徴でもある。インフィニティとしても欧州進出を機に、さらなるブランド地位の向上を目指していく。
----:販売拠点の整備計画は。
Sipe氏:インフィニティセンター(販売店の呼称)は09年4月までに25か所の販売拠点を構築し、2010年には15カ国80拠点を整える。日産ブランドとの併売ではなく、全てインフィニティ専門のディーラーだ。イギリスにも09年4月以降の第2フェイズで進出予定だが、インフィニティブランドとしては初めての正規右ハンドルモデルとなる(注:日本の日産ディーラーで販売されていたインフィニティQ45を除く)。
----:投入するモデルは米国仕様と同一なのか。
Sipe氏:インフィニティはグローバルのブランドだ。各地域の交通法規にあわせた仕様にする以外は基本的に全て同一仕様で販売する。ただし、投入する車種についてはそれぞれのマーケットで出し分ける。
----:米国や日本では、V6エンジンに3.5リットルや3.7リットルが混在するが、ヨーロッパではすべで3.7リットルだ。
Sipe氏:各モデルを出すタイミングでそうなっただけ。いずれは統一されるものと考えている。
----:インフィニティにとっていちばんの競合と考えているブランドは?
Sipe氏:われわれはいずれのブランドとも異なる個性で、このプレミアムマーケットに挑みたいと考えている。したがってライバルとなるブランドについては特に意識していない。
《通訳:ケニー中島 Kenji "Kenny" Nakajima》